
2002年、北朝鮮は「拉致被害者8人はすでに死亡した」と発表し、横田めぐみさんについても「自殺」とする死亡確認書を提示した。だがその文書には、拉致被害者・蓮池薫さんが見覚えのある筆跡が記されていた。拉致被害当事者である蓮池さんが、北の工作の裏側を語り尽くす!※本稿は、蓮池 薫『日本人拉致』(岩波書店)の一部を抜粋・編集したものです。
北朝鮮は「死亡確認書」に
罠を仕掛けていた
横田めぐみさんについて北朝鮮当局は、2002年9月、日本から事実調査チームが派遣された段階で、平壌49号予防院(精神科病院)で発行した「死亡確認書」、めぐみさんの元夫である韓国人拉致被害者金英男さんが横田滋さんご夫妻に宛てて書いたとされる手紙、拉致されてから「死亡」に至るまでの生活経緯の「報告」などを日本側に提示した。
このうち、「死亡確認書」には、作成者である「平壌49号予防院」との施設名と印が下欄にあり、その上に、(1)名前:リュ・ミョンスク(2)性別:女(3)生年月日:1964年10月5日(4)死亡日:1993年3月13日(5)住所:平壌市順安区域大陽里 職種:扶養、などと記されている。
めぐみさんの北朝鮮での偽名は、もともとリュ・オクヒだったが、1987年11月に起きた大韓航空機爆破事件の犯人・金賢姫が日本人拉致被害者から日本語を教わったことを自供して、日本で大きく騒がれたあとに、(1)のリュ・ミョンスクに変えられた。
このとき私の妻(編集部注/筆者の妻は拉致被害者の奥土祐木子さん)も名前が変わったが、金賢姫による秘密流出を恐れての措置だったと考える。私たちは何かの手続きをするときは、いつもこの偽名を使っていた。