以下、同書の要旨をなぞってみる。
公的なデータで就職率を見ると、特に文学部が不利には見えない。それには2つの理由が考えられる。ひとつは、就職した人は人気企業でも不人気企業でも変わらず「1」とカウントされるので率的には同じになってしまい、「質的な差」が見えないこと。
もうひとつは、2009年当時はまだ大手に「一般職」採用の枠があり、文学部は女子学生が多いため、そこで数を稼いでいたこと。
この2つの幻惑要因を除くために、「大卒就職人気ランキング100位以内の企業」に絞り、早慶の男子学生がどれだけ入っていたか、を図表41にした。

金融や商社、メーカーには
文学部は採用されにくい?
法・商・経済(政経)という3学部と、文学部のみの比較なので、前者は学生数が3~4倍にもなる。だから就職数に差がついて当たり前ではあるが、それでもその差が大きすぎる。100位以内企業に就職した総数は、慶応は法・商・経済が文学部の24.5倍、早稲田でも9.2倍と、学生数よりはるかに大きな差がついている。
業界別に見るとさらにその差ははっきりとわかる。金融系の人気企業だと、慶応は法・商・経済から315人の採用に対し、文学部からはたったの3人。早稲田はここまでの開きはないが、それでも、法・商・政経が269人採用に対して、文学部は13人と、20倍以上の差がつく。
ハイテクメーカーだと慶応は36倍(文学2:法・商・経済72)、早稲田が18倍(文学3:法・商・政経54)、総合商社だと慶応16.5倍(文学4:法・商・経66)、早稲田が37倍(文学1:法・商・政経37)と、ここでも厳然たる差が見受けられる。
唯一、マスコミ・出版で文学部がそこそこの数字を挙げているが、それでも慶応が文学部7:法・商・経済20、早稲田は文学部9:法・商・政経28と、人数比を多少上回る程度でしかない。