氷河期問題は閲覧数が
期待できる鉄板ネタ
ネット全盛の昨今では、読まれない類の記事は減る。これだけアップされ続けているということは、氷河期問題は閲覧数が期待できる鉄板ネタなのだろう。
こうした「売れるから」という理由以外にも、マスコミが氷河期世代の問題に熱心な理由が2つほど考えられる。
ひとつは大手全国紙の女性キャップ(2010年当時)から聞いた話なのだが、「氷河期問題は大手マスコミにとって、非常に都合がよい」ということ。ジャーナリズムの使命として貧困や格差問題は最重要テーマのひとつだが、ここを深掘りしていくと、必ず、性差と学歴差に行き着く。
男性かつエクセレントな学歴の社員が多い大手マスコミでは、性差・学歴差に強く光を当てれば、えてして自らが返り血を浴びることになる(例えば、家で奥さんから「あんたも家事しなさい、記事にも書いてたでしょ」と突き上げられたり、と)。
ところが「大卒の男性で悲惨な思いをしている氷河期世代」を取り上げるのであれば、そこには性差も学歴差もない。だから自らに累が及ぶ危険性は低く、安心して俎上に載せられるというのだ。
正直、この説明のすべてが正しいと断言はできないが、「上位大学を出ても就職できず、長年フリーター」というストーリーは、性差・学歴差をうまくかわせる都合のいい構文だとは思った。
メディア業界に多い
「文学部出身」問題とは?
もうひとつは、メディア業界にとみに多い「文学部出身者」の問題があるのではないか。
実は日本の大手有名企業への就職には、偏差値だけでなく、学部でのハンデも存在する。企業は文学部生の採用に二の足を踏む傾向があるのだ。そうした「文学部特有の受難」を、氷河期世代は「時代のせいだ」と受け止めてしまったのではないか。
これは、私が拙著『偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部』(朝日新書、2012)の中で調べた内容なのだが、文学部の就職環境は上位大学でも芳しくない。同書では、ポスト氷河期で最も就職環境が良好だった2009年時点の、早稲田・慶応大学の学部別就職数を調べている。当時は、上位大学がホームページ上で、就職先企業別にどの学部から何人入ったかを公表していたのだ。それを集計すると、文学部が圧倒的不利だということが浮き彫りになった。