その会社と人間性が合うか
合わないかが重要

本田 パタゴニアの入り口は、相当厳しいですよね?

藤倉 厳しいですね。常に1週間で50〜70人が、このオフィスに来ます。

パーテーションのないオフィス。誰がマネジャーかデスクを見ただけではわからなかった。

本田 ものすごい数ですね。

藤倉 月で換算すると、全社員と同じくらいの人数の人たちが働きたいと応募してきます。ただ、せっかく入っても、ここのライフスタイルは合わない、やったことだけ認めてもらえばいいというアメリカ式のスタイルがある人は、3日もしないで辞めていきます。

本田 今、ここは何人いらっしゃるんですか?

藤倉 ベンチュラだけで、300人弱です。デザイン関連、経営の意志決定も全部ここでやっています。

本田 藤倉さんは、そもそもなんでパタゴニアで仕事をしようと思ったのですか?

藤倉 もともと全然違う業態にいてソニーとか、ヨーロッパの車の会社にいたんです。パタゴニアには、友人の勧めで履歴書を送ったんですが、僕、10行くらいしか書かなかったんです。小中高、大学の名前と、あとサーフィンが好き、これだけ。それを見て、向こうも呆れたのか「こいつに会うしかない」と思ったんじゃないですか(笑)。それで、社主のイヴォンとの面接は、いろんな形があるんですが、僕の場合は、サーフィンを一緒にやったんです。おそらく一挙手一投足が見られていたのではないかと思います。

本田 私もサーフィンをやるので、よくわかります。いい波が来たときに、どんな対応をするか。どんなふうに海に入って、どんなふうに波に向かうか。そういうところに、ものすごく人間というものが出ますよね。

パタゴニア本社の駐車場

藤倉 イヴォンの面接は、そのときは全然分からなかったんですけど、今思えば、スタートする前から、こいつのものの見方は正しいかどうか見るつもりだったんでしょうね。ああ、これが、イヴォンのやり方なんだなって。で、僕はたまたま、ものすごくいい波が来て、本当に正しいところから出たんです。この会社に入って、25年間それ以上の波はないです。僕のものの見方、考え方がイヴォンの考え方にマッチした。そう思っています。

本田 パタゴニアは自由度が高いだけに、人間がしっかり見られる。スキル以上に人がチェックされるということなんですね。

次回は、社員がイキイキと伸び伸びと仕事をしている会社、驚くべき制度を持つ会社をご紹介します。※次回は6月25日更新予定です。


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本田直之(ほんだ・なおゆき)
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼CEO
シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQ への上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントのアドバイスを行う。東京、ハワイに拠点を構え、年の半分をハワイで生活するデュアルライフを送っている。

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このほかの著書に、ベストセラーになったレバレッジシリーズをはじめ、『ノマドライフ』(朝日新聞出版)、25万部を越えるベストセラーとなった『面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則』『ゆるい生き方』『7つの制約にしばられない生き方』(以上、大和書房)『ハワイが教えてくれたこと。』(イー スト・プレス)などがある。
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