
新米の時期になっても令和のコメ騒動は収束する気配がない。小泉農水相は備蓄米を放出したが、結果的にコメの価格は再上昇しつつある。家計の節約志向から「パックご飯」の売れ行きが好調だが、原材料高騰を見据えて10月から値上げに踏み切るという。自民党は総裁選で5人が立候補したが、従来の農業政策の複雑・非効率を変えられるのだろうか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
農業政策の“ツケ” 令和のコメ騒動が収束せず
コメの価格が再び上昇し始めた。9月初旬以降、今年の新米が食品スーパーの店頭に並び始めたが、一部の地域では5キロ当たり約7000円という高値になっているという。コメの流通に詳しい専門家の間では、「コメ価格は3500円には戻らず4000円台に上昇する」との見方もある。
急遽放出した備蓄米は、流通体制不備などの問題から供給が思うように進んでいない。店頭に並ぶとすぐに売り切れてしまい、需要を満たす状況にはなっていない。令和のコメ騒動は、まだ完全収束の気配がない。むしろ、想定以上に悪化している。
消費者の間でも、「コメの価格はまだ上がる」との感覚=インフレマインドが醸成されている。産者・卸売業者など供給サイドでも、コメの先高観が高まっている。そうした状況から、在庫を積み増して高値での売却を狙う業者は増えるだろう。当面、コメ価格の上昇は続くとみたほうがよい。
コメの価格が上がると、わが国の物価にはさらに押し上げ圧力がかかる。インフレが進むと、理論的には金利を引き上げることが必要になる。コメの価格上昇は、庶民の食卓だけでなく、日本の金融政策にも無視できない影響を与えると想定される。これまでの農業政策の“ツケ”が回ってきたということだ。