コメ騒動はトランプ関税と並ぶ日本経済の憂い事
新米の流通が本格化した時期にもかかわらず、コメの価格はむしろ上昇している。今のところ、備蓄米の放出は目立った効果を発揮していない。現状を改善する、抜本的な手だては見当たらない。
米穀安定供給確保支援機構の8月調査によると、「主食用米の向こう3カ月の米価水準は上昇する」との見方が、昨年同月と同水準近くまで上昇した。コメ価格はさらに上昇すると身構える供給者は多い。
当面、生産者や卸売業者は、これまで以上に在庫を積み増し、より高い価格水準での供給を目指すだろう。自民党が衆参共に少数与党に転落した状況下、複雑化して効率性が低下したコメ流通市場の実態解明は容易ではない。米国やベトナムなどからコメの輸入を増やすことも難しいとみられる。
コメ価格の上昇は、日本経済に無視できない負の影響を与える。まず、個人消費への打撃だ。主食であるコメが高いままでは、多くの家計で食品の購入を内容・頻度共に見直さざるを得なくなる。財布のひもはより固くなるだろう。
金融政策への影響も無視できない。日本銀行は、『経済・物価情勢の展望』(展望レポート)にて消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通しを公表している。この指数は、コメを含む。コメ小売価格の上昇は、日銀の物価見通しの上振れ要因になり得る。
ただでさえ近年は人件費の増加により、わが国の消費者物価には押し上げ圧力がかかっている。それに上乗せするようにコメの価格が上昇すると、日銀が想定した以上にインフレが進行する恐れは高まる。
状況によっては、物価上昇に歯止めをかけるために、日銀が追加利上げを進めなければならなくなるかもしれない。金利が上昇すると、勢いのない国内の個人消費はさらに下振れることになるだろう。コメ価格の再上昇は、トランプ関税と並んで日本経済の下振れリスクを高める要因である。