
たぶん、考え抜かれた再会。黒井(瀧内公美)とうさこ(志田彩良)が登場
「ヤムラだ」
ぶっきらぼうに答えるヤムだが、きょとんとなる少年のクセ毛髪をいじって去っていく。くせ毛がヤムラと似ているこの少年を演じているのは、嵩の少年期を演じた木村優来。まるで高知でヤムラと嵩が出会った頃のようだった。
エンディングが流れ、そっと手を握り合うのぶと嵩。
のぶは父の帽子に「うちの夢はアンパンマンがかなえてくれたみたいや」と語りかけた。
のぶは少女時代、子どもに体操を教えるのが夢で、教師になれたものの軍国主義を教えることになった。戦後、その後悔から、戦災孤児のために何かしたいと思っていたが、何もできず……。
でも、アンパンマンを世に広める手伝いをすることで、ようやく夢に近づけたのだ。
高知の厳格な女学院に嵩がイラストを寄贈することになって、のぶはそのイラストを届けに行く。黒井(瀧内公美)は理事長、うさこ(志田彩良)は校長になっていた。のぶの人生が大きく変わったきっかけとなった女学校の教師と幼馴染にようやく面と向かって会えるようになったのではないだろうか。
唐突に黒井とうさこを倉庫から出してきたようで、そうではなく、たぶん、考え抜かれた再会だと思う。のぶなりの戦争時代の自分との決着だ。
「朝田のぶ、お宅の先生に伝えなさい。飢餓の人々を救う、平和のアンパンマンたれ」と黒井は言う。軍国主義を貫いた彼女もいまでは平和を考えているのだろう。けれど、のぶも黒井もひとつの思想に夢中になりすぎると思う。余計なお世話ですが。
蘭子は難民キャンプの取材に行く。高知新報に入ったのぶがやるべきことだった気がするが、なぜかジャーナリズムは蘭子に引き継がれた。
見送る八木が、蘭子の誕生日を祝うカードを手渡す。手作りで、しかも指輪が入っていた。
「小さなギフトを贈ることで 人はいがみあうのをやめ 笑顔になる。みんな仲良く」と蘭子は、キューリオのモデル・サンリオの理念のようなことを言う。宣伝か。
八木「人間は戦争を繰り返す生き物で愛することや平和は幻想だとしたら、未来の子どもたちにそんなくだらない世界を残すことは俺は耐えられないんだ」
蘭子「世界中のどこかでいまも戦争が続いているからみんなに関心をもち続けてほしいんです。ひとごとでなく自分のこととして」
蘭子は嵩の『アンパンマン』をおしつけがましいと批評していたが、自分たちの会話をどう思っているのだろうか。言っていることはもっともなのだが、なんだかふたりのセリフがあまりにもメッセージ性が強くて……。
一時期、はっきり言葉にしないドラマブームがあった(『おかえりモネ』の頃)が、いまは誰にでもわかる言葉を発していこうというブームが来ている気がする。