これは農家に限らずだが、“公金依存”が強まると、努力を放棄して衰退が進んでいくものだ。かつて世界一だったタイはベトナムに抜かれ、そしてインドに抜かれ、最近では振り向けば、パキスタンやカンボジアが迫ってきている(読売新聞 6月15日)。
「農業が政治にくっつくとロクなことにならない」という真理をタイの歴史は教えてくれているのだ。
翻って日本を振り返れば、タクシン政権のような「保護政策や補助金」を、かれこれもう50年以上も続けてきている。公金依存という点ではもはや手の施しようがないほど「重症」だと言わざるを得ない。
実際、JAやコメ農家の中には「日本のコメ農業を強くするには、もっと国の手厚い保護がいる」と主張している方も多い。生活保護受給者の一部に経済的な自立ができない人がいるのと同じで一度、公金で平穏な暮らしを実現してしまった人は「もっと支援を」「支援を打ち切られたら死んでしまう」という感じで、かえって「自立」が遠のいてしまうケースもある。日本のコメ農家はまさしくそういう状態だ。
こういう現実を踏まえると、日本のJAやコメ農家に「企業努力」を求めるのは難しい。つまり、まだまだコメの価格は上がり続ける可能性は高いということだ。
石破政権は減反政策の廃止やコメ増産という、コメ農政の大転換を宣言したが、こういうものはだいたいしれっと「骨抜き」にされる。ということは、我々日本国民は好む好まざるを問わず、JAやコメ農家のみなさんの「コメの生産は原価がバカ高いんだから、高いとか文句を言うんじゃありませんよ」という主張を、羊のような従順さで受け入れなくてはいけないのである。
「え? 5キロ5000円? 農家の皆さんの苦労を考えたらバカ安じゃん、物価高騰を踏まえたら7000円くらいでもいいだろ」なんて会話が「常識」になる時代がもうそこまできているのかもしれない。
