絶対に達成できない仕事は
適当に流すこと
1987年に外交官研修生としてロンドンに留学していた時のこと、ヴェネチア・サミットの手伝いに駆り出されました。記者の宿舎で配車をする担当となり、「記者がクレームを言ってきたら、おまえがここで全部止めろ」と上司から命じられました。ただし、電話機は置いてあるけれど、電話線は繋がっていません。
だいたいは酔っ払って怒鳴り込んでくる記者が相手で、適宜、電話の受話器を手に取り、上に連絡をしているフリをしながら「今、この記者から、こう言われているんですが」などと演じながら適当にあしらうわけです。権限もなければ、電話すら繋がらないのだから、解決不可能な仕事です。
でも、ある人にその仕事をやらせているフリをするということが、会社として総合的なところで何らかの意味がある場合に、このような仕事が発生します。そういう仕事の場合は適当に流すのがいい。
出世し続ける人の2つの特徴
「嘘をつかない」「人を裏切らない」
では、成果を出したうえで、途中で出世が止まってしまう人と、役員クラスまで出世できる人にはどんな違いがあるのかといえば、「嘘(うそ)をつかない」人かどうかです。
本当のことは全部言わなくてもいいけれど、嘘をつかない人は出世します。その次の段階として、もう少し難しくなるんだけども、取引先でも同僚でも信頼関係が確立された場合に、自分の方から義理をかいて信頼関係を崩すということをしない人が出世します。
相手が義理をかいて信頼関係を崩されてしまうことは仕方ないですが、自分の方からはしない。そうすると、何回かは裏切られたりして、正直者は馬鹿を見るようなことがあるけれども、自分からは裏切らない。その状況を必ず他の人が見ています。だから、そういう人は出世します。
相手から裏切られても
仕返しをしてはいけない理由
相手に裏切られても仕返しはしないことです。余計な敵をたくさん作るのでやめたほうがいい。
ニクラス・ルーマンというドイツの社会哲学者は著作『信頼』で、「信頼とは複雑性を縮減するメカニズム」だと言っていますが、ビジネスの世界でも人間関係は非常に複雑です。
だから信頼とは究極の複雑性を縮減するもので、嘘をつかない人、信頼関係を自分から裏切らない人はものすごい貯金をしていることになるのです。それが大きく出世する場合には、一番重要になります。
でも、小さい出世をするだけならば、そのコツは夏目漱石の『吾輩は猫である』に書いてあります。