人の足を平気で引っ張る人は
課長より上には絶対にいかない
『吾輩は猫である』の中で、「三角人間」という言葉が登場します。義理を欠き、人情を欠き、平気で恥をかく。こういう人間は短期的には出世します。課長くらいか、あるいはチームリーダーぐらいにはなる。ただし、出世はそこで止まり、使い捨てにされる。なぜなら、本人以外の誰もそういう人と付き合いたいと思わないからです。
だから、いわゆるガリガリ熱く仕事をこなし、出世に燃えて、人の足を平気で引っ張るタイプの人は、短期的には数字は出します。でも、上司も同僚もよく見ているので、本人以外の全員が、その人が上に行くことに対して賛成しません。
そうすると「あれ、あの人はあんなにがっついて成果を出したのに、なんで出世しないんだろう」となるわけです。義理を欠き、人情を欠くぐらいのことはできても、平気で恥をかけるかといったら、なかなかハードルが高いわけですが、そういう人はいますからね。
そういう人は課長までは間違えてなることがありますが、その上には絶対にいきません。だから、そういう上司に当たった時にはじきに淘汰(とうた)されると思って見ていればいい。間違っても戦わないことです。
上司と喧嘩しても
エネルギーをロスするだけ
理不尽なことがあった場合にも上司と戦ってはいけません。戦うのではなく、逃げることを考えた方がいい。
それを教えてくれるいい場所があるんです。金閣寺です。金閣寺の舎利殿の裏山には、滝を登りきった鯉(こい)は竜になるという中国の故事にちなんで、鯉をイメージした鯉魚石(りぎょせき)が置かれています。
私は大学のゼミの学生たちや若いビジネスパーソンを連れて行って、時々あそこで話をします。「みんな、鯉が滝登りに成功したらどうなるか?」と聞きます。「竜になります」と。「竜は存在するか?」と聞くと「しません」と答えます。
つまり、「鯉の滝登りは成功しないという教えなんだよ。だから、いつまでも鯉の滝登りみたいなことをしても全く意味がない。竜は存在しないからね。この庭はそれを示しているんだよ。上司と喧嘩(けんか)したっていいことがないということを教えているんだよ」と、こういう話をするんです。
特に強圧的な上司の場合は、正面からぶつかるとものすごいエネルギーのロスになります。
直属の上司とトラブルが起きたら
「斜めの上の人」と仲良くするといい
直属の上司との間でトラブルが起きて困っている時には、斜め上の人、たとえば前の上司で信頼できる人や他部署の上司などに相談するといいでしょう。直接の利害関係がないから結構いいアドバイスをもらえることがありますし、いずれにしろ味方を作っていったほうがいい。
そのためにもやっぱり重要になるのは、まず嘘をつかないということ。それから人間関係をこちら側から裏切らないということです。2つ目の方は結構難しい。やっぱり人間だから、裏切られたら腹も立ちます。
例えば、「この仕事をやってくれ」「何があっても最後まで一緒で、骨まで拾うよ」と言われたのに、骨になるところまでは見ていても骨を拾うことは絶対にしない。そういうことはよくある話だけど、腹を立ててもいいことはありません。そういう人とは二度と付き合わない、距離を置くということですね。