経験上、だいたい50代半ば以上の年齢層に多い気がする。外でも自宅でもやめてほしいところだ。特にこの格言では「妻」がキーポイントとなっている。古代の神話や物語にもしばしば機知に富んだ女性・女神が登場する。古代メソポタミア文明を代表する文学作品の「ギルガメシュ叙事詩」において、野人エンキドゥに知性を与えたのも女性であった。
この格言から、古代エジプトにおける家庭問題では、女性たちが優位に立つと考えられていたことがわかる。一般庶民の間では、女性の役割はほとんどが家庭内の活動に限定されていたようだ。しかしながら、裏を返せば家庭内では、女性たちは大きな権力を保持していたとも言えよう。その証拠に古代エジプトで主婦は「家の女主人(ネブト・ペル)」と呼ばれていた。現代のエジプトでも妻に指示されて毎日市場に野菜やパンなどを買いに行く男性は多い。女性は家のなかにいるため、外に行くのは男性の仕事なのだ。
寿司屋で「ウニが少ない!」と叫ぶ
現代人の自制を持たぬ恥ずかしさ
ただこの格言からは、エジプトが男性優位の社会であったこともまた十分に読み取れる。明らかに各文言が上から目線なのである。「能力を認めているなら、黙って目を配ることだ」とか。しかし、たとえそうであったとしても妻に口出ししない方が上手くいくという考え方が浸透していた点は納得できる。「年齢・性別にかかわらず、同じ屋根の下で暮らす者には、誰でも軽率な心を自制すべき」なのだ。問題はこの手の格言が理解できないタイプの男性にある。
先日、お昼ご飯を食べに1人で某回転ずしチェーン店を訪れたときのことである。回転ずしのレーン越しに男性が1人で食事をしていた。すると突然彼は大声で怒鳴り出したのである。20代前半くらいであろうアルバイト店員を横に呼びつけて言ったのだ。「ウニが少ない!」と。客の私でさえ噴飯もののセリフに倒れそうになったのだから、アルバイトさんはさぞ驚いたであろう。しかも「皿を取り替えろ!」とか「店長を呼んでこい!」とか次々とまくし立てていた。