だが、西貝レストランが負った傷は深かった。激しい論戦の末、顧客が激減したのである。賈さんによると、羅さんのSNSの書き込み直後には各店舗それぞれ100万元(約2000万円)の売り上げ減となり、さらに賈さんとの論争が白熱してからは店舗あたり200万から300万元(約4000万~6000万円)の売り上げが流出したという。

 このため、同店は、これまでセントラルキッチンで加工して各店舗に送り出していた製品を、10月1日までにすべて各店舗において注文を受けてからの加工、調理に変更するなどの改善方針を明らかにした。さらに「西貝キャンペーン」と称し、会員登録を済ませた顧客向けに全国の店舗で何度でも使える100元(約2000円)相当の優待券を発行して、顧客の呼び戻しを図っている。

 しかし、実際には「とろ火でじっくり何時間も煮込むような料理は、注文してから作っても間に合わない。一体どうするつもりなんだろう?」という声も上がっている。「賈さんが、羅さんの指摘に脊髄反射して後先考えずに『告訴する』などというべきではなかった。きちんとセントラルキッチンのありようを説明すべきだったのに」という冷静な指摘もある。

 また、預製菜に対しても、論争を通じて「身体に悪い」「衛生基準に見合わない」などの警戒心が広がり、購入を見送る動きもあるという。生半可な理解に基づく論争はさらに飛び火して、小中学校の給食に預製菜が使われているという指摘も起き、セントラルキッチンも、劣悪な環境かでの粗製濫造製品もひっくるめて「預製菜」が悪者にされてしまった感がある。

 うーむ、国が業界基準を決める動きに出たのは良かったが、一体この論争、誰得だったのだろう?

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