このように人手不足でありながら、採用に消極的な飲食店も少なくありません。

「時間とお金をかけて採用しても、人が集まるとはかぎらない」
「採用しても辞められてしまうかもしれない」
「売上が上がる見込みがなく、新たな働き手を雇う余裕がない」
「未経験者を教育する仕組みがない」

 などの理由からです。

 そのようななか、凪は、2023~2024年の1年間で、合計132人を採用。そのうち退職者数は20人。離職率は15%で、業界平均を大きく下回ります。

 飲食業において、人なくして経営が成り立つことはありません。凪が「ラーメンに磨きをかけていく」ためにも、「人」の力が必要です。

 企業の成長の源泉は、人です。コロナ禍を乗り越えて、私が確信したことは、何があっても揺らぐことのない「会社の土台」をつくる大切さです。

 では、どうすれば、会社の土台を強くできるのでしょうか。

 その答えは、「人を育むこと」。凪にとって、ラーメン以上に大事なものがあるとすれば、それは「人」です。

 凪の「人」についての重要な取り組みの1つ、採用について、紹介していきます。

会社も社員もズレが生じる
採用での致命的な過去の失敗

 凪では、採用でミスマッチを起こさないために、明確な基準を設けています。

 この採用時のミスマッチとは、「会社と社員(あるいは求職者)の間に生じる認識のズレ」のことです。

・会社側が指摘するズレ
「せっかく採用したのに、期待通りの活躍をしなかった」
「早期に離職してしまい、採用や教育にかけたコストが無駄になった」
「向上心がまるでなかった」など
・社員側が指摘するズレ
「希望していた仕事ができず、まったく違う部署に配属された」
「成長できる環境だと思っていたら、誰も仕事を教えてくれなかった」
「人手不足だからと、有給休暇の取得を拒否された」
「賞与や昇給が期待できなかった」
「社内の人とコミュニケーションが取りにくかった」など

 人手が不足すると、会社側は

「来るもの拒まずに採用」
「猫の手でもいいから採用」

 します。

 その結果ミスマッチが起きて、会社と社員の要望が噛み合わなくなるのです。

 かつての凪もそうでした。

「どんな人でもウエルカム」と採用をかけたところ、いわゆる「ツッパリ」ばかり集まったことがあります。