「BYDオワコン説」の真相は
F:なるほど。とても良く分かりました。イヤな質問ばかりが続きますが、いわゆる「BYDオワコン説」について聞かせてください。サプライヤーへの支払いサイトを11カ月から2カ月へ是正せよと当局から指導が入り、「その9カ月ぶんの前倒しで資金ショートするのでは」という報道がありました。実際のところはどうなのでしょう。実際にダメージはありましたか?
東:流れとしては報道の通りです。元々の長い支払い条件を2カ月へ是正したことで、会計上はキャッシュフローに一時的な圧力がかかる……そこを踏まえて「BYDは危ないのでは」という見立てが出たわけです。ですが、あれを直ちに“経営危機”に結びつけるのは過剰だと思います。BYDは規模が大きく、連結での資金運用枠組みもあります。是正対応=即資金ショート、というのはあまりにも短絡的です。
F:それともう一つ、値引き競争のブレーキも話題になりました。「過度なディスカウントはやめるように」、という趣旨で当局からの規制がかかった……これも「成長に陰り」と読む向きがありました。
東:行き過ぎた値下げ競争にストップが入ったことは事実です。その結果、短期の伸び率は以前よりモデレート(緩やか)になっています。しかしそれをもって「オワコン」と断ずるのは飛躍というものです。全体の事業は堅調に回っていますし、むしろ構造的な健全化だと捉えています。価格で一気に押し切るのではなく、適正価格と供給のバランスを取り直すフェーズに来たということですね。
F:支払いサイトの是正がイコールで資金ショート。値下げ制動はイコールで失速というのは短絡的で間違いであり、「短期の揺れ+中期の整え」が本質だ、という理解で正しいですか?
東:はい、正しいです。もちろん、是正や制動が業績に影響を与えないとは言いません。しかし、そこからいきなり経営危機に飛ぶのは行き過ぎです。
足元は安定的に運営できていますし、日本を含む各国の市場でやるべきこと、つまり商品を出し、実績を積み、販売・整備の基盤を増やしていく。これを粛々と進めていく。数字の山谷(やまたに)は確かにありますが、それを企業の寿命と直結させる見立てには与しません。