李氏については、大統領就任から現在までのところ、取り立てて目立ったスキャンダルなどはなく、むしろ自身のイメージアップに余念がない。APECのPR動画にK-POPアイドルたちと登場したり、先日の秋夕(旧盆)にはバラエティ番組に夫婦で出演したりと話題を呼んでいる。李氏自身としては「親しみやすさ」をアピールしたい狙いと思われるが、過去の様々なスキャンダルや李氏の人間性にまつわるエピソードを知る者からすれば、こうしたメディアを使ったイメージ戦略にも政治的な意図を感じ、好意的には見られないというのが正直なところだ。

 李氏の支持者は相変わらず尹氏夫妻や保守派を激しく非難し、李氏を讃えている。しかし最近でも、尹氏とその妻である金建希(キム・ゴンヒ)氏をめぐり、拘置所での夫妻の処遇問題で李氏の執念深さが垣間見え、尹氏夫妻をとことん追及しようとする姿勢に不信感や嫌悪感を持つ国民も少なくない、というのもまた事実である。

安易な「NO JAPAN」再来はないのでは

 かつての文在寅(ムン・ジェイン)政権下で行われた「NO JAPAN」と銘打った反日政策については、韓国でも批判的に、苦々しく思っていた国民も多かった。その後のアニメ人気や日本旅行の流行など、フィーバーともいえる日本ブームが続いていることを考えれば、いくら李氏といえども「NO JAPAN」運動のように日本に強硬な姿勢をとったところで、文氏の時のようにうまくはいかないことは見越しているはずだ。実際、ネット上では、「反日政策などで日韓関係が再び悪化するのでは」という懸念に対し、「再びNO JAPANを行おうものなら、かえって日本旅行のチャンスだと日本に行く人がさらに増えたり、ユニクロのセールにも殺到するかもしれない」などと皮肉めいた意見も見られた。

 また、国民の意識も変化している。最近では特に10代、20代といった若い世代が左派に対する拒絶感を強めているのだ。これは左派が一見、耳触りが良く理想的なことを主張する半面、相反する者に対しては徹底的に攻撃し、それを正当化していることへの反発がある。また、左派を嫌う若者たちの親世代に左派支持者が多く、その政治的思想の偏向性や偏屈さを目の当たりにしてきた背景もある。