宇宙飛行士にとって失敗とは、「死」につながることもあるほどのタブーな存在です。「失敗しないための訓練」に奮闘している環境下で、六太のこうした姿勢は、仲間たちの心理的安全性を高め、挑戦することへのハードルを下げたはずです。
負の感情を受け入れたとき
はじめてチームに変化が起きる
このように、心理的安全性という概念の認知度は高いものの、実際に形成するには、長期的な視点と丁寧なアプローチが必要になってきます。では具体的に、どのようなことから取り組んでいけばよいのでしょうか。
そのヒントとなるのが、「心理的柔軟性」です。
心理的柔軟性とは、スティーブン・C・ヘイズ(編集部注/臨床心理学者)氏らが提唱する「アクセプタンス・コミットメント・セラピー(ACT)」という認知行動療法に用いている概念で、「自分の感情や思考をありのままに受け入れ、現在の状況に適応しながら、価値観に基づいた行動を選択できる力」を意味します。
自分にとって好ましくない出来事が起きたとしても、それを受け入れたうえで、「じゃあ、どうしよう?」を考えられる状態です。ちょっとわかりづらいかもしれませんね。具体的な事象に置き換えてみましょう。
あなたは、チーム内での作業分担について疑問を感じていて、「本当にちゃんと機能するだろうか」と、不安を抱いているとします。
しかし、「せっかくみんなで決めたのだから、今さら波風を立てたくないな。そもそも、メンバーに“不安に感じているの?”とか思われたくない……」と考え、言い出すことができません。
ここで心理的柔軟性が高い人は、自身を俯瞰し、「私は今、不安を感じている」と、それがネガティブな感情であっても受容します。そのうえで「プロジェクトを成功させるためには、改善できることはやるべきだ」という価値観に従い、「じつは、作業の進め方に疑問があって、すごく不安なんだよね……」と、メンバーに自分の気持ちを打ち明けるのです。
もしかすると、「なんで今さら」と言われるかもしれません。しかし、作業分担について見直してみようという意見が出る可能性もありますし、「じつは私も不安に感じていた!」と共感するメンバーが出てくるかもしれません。







