■第二段階「転職を意識し始めた」
日常的な行動や発言に明らかな変化が表れ、これまでとは異なる姿勢が見えるようになると、転職を意識して、具体的なアクションを取り始めた可能性があります。具体的にはこのようなケースが挙げられます。
・業績やパフォーマンスが、一時的にではなく、一定期間にわたって低下している
・以前は興味を示していた業務やプロジェクトに対する関心・意欲が見られなくなった
・よく残業し、あまり休むこともなかった部下が、定時帰りの日が増えたり、有休取得の頻度が増えたりしている
・業務時間中に私用電話に立つ様子が見られる
・急に、新たな資格試験の勉強を始めた
転職に向けてアクションを取り始めると、エージェントや転職先企業との面接のために時間を割いたり、外部との連絡が頻繁になったりする傾向があります。その影響で本業に従前ほどは本腰が入らなくなり、逆に新天地で必要な勉強を始めるなど、日々の行動に少しずつ変化が見られるようになるでしょう。
当該部下を引き留めたい場合は、このあたりがラストチャンスになります。
本人にとって魅力を感じられるポジションや報酬、労働環境などを用意して、組織が本人にどれほど期待しているかを具体的に示さなければなりません。
■第三段階「退職意思を固めた」
残念ながらこの段階にまで至ってしまうと、引き留めはなかなか困難かもしれません。既に転職活動が相当進んでいる可能性が高いためです。具体的には、このような様子が見えているはずです。
・仕事に身が入らず、業務時間中もボーッとしていることが多くなった
・会議やプロジェクトチーム活動など、社内活動への積極性が低下し、関与のために割く時間やエネルギーが明らかに減少している
・遅刻が増えたり、有給休暇を限度ギリギリまで取得しようとしている
・これまでなんとなくつらそうな様子だったが、一変して晴れやかな表情をするようになった

新田 龍 著
・自身が担当している業務に関して、マニュアルを作り始めた
・デスク周りに置いていた私物がだんだんなくなっていき、スッキリし始めた
ただしながら、これらはあくまで一例であり、個々のメンバーの性格や状況によって異なる場合ももちろんあります。重要なのは、このような兆候によって「普段と何か様子が違う」と変化に気づけるくらい、あなたが日常的に部下に関心を寄せているかどうかです。
さらには、変化が起きてから慌てて取り繕うのではなく、「最近どう?」「うまくいってる?」といった形で、普段のコミュニケーション機会を大切に活かし、積極的にかかわり続けることで、彼らとの地道な信頼関係を構築していくことが有効です。