
参院選の投開票日(7月20日)から始まった「石破降ろし」は9月7日の首相、石破茂の退陣表明まで約50日間も続いた。この過程でメディアは毎日のように「ポスト石破」の予想を繰り返し報じた。テレビはその顔触れの写真を並べ、一人一人について同じような論評を繰り返した。結局、石破の後継者を決める自民党総裁選には見飽きた予想通りの候補がそろった。
▽元経済安全保障相・小林鷹之▽前自民党幹事長・茂木敏充▽官房長官・林芳正▽前経済安全保障相・高市早苗▽農水相・小泉進次郎――。
いずれも昨年の総裁選に立候補して敗退した5人。自民党の全党員が投票できるフルスペック型の方式が決定した時点で、党員票の大量得票が見込める候補が優位ということは目に見えていた。具体的には高市と小泉の2人が“本命”に位置付けられ、これを安定感を買われた林が追う展開が続く。
共同通信や読売新聞などのメディアが行った国会議員と党員を対象にした動向調査によると、1回目の投票で過半数を獲得できる候補はなく、決選投票に持ち込まれることがほぼ確実視される。そこで無視できないのが不本意な退陣に追い込まれた前回総裁選の勝者、石破の動向だ。国連総会出席のために訪れた米ニューヨークで行った記者会見で石破は大きく踏み込んだ。
「後任の総裁には、この1年間本当に共に汗し、共に涙してきた方が多くの支持を得られることを個人的に望む」
名指しこそしなかったものの現職閣僚の小泉か林へのバトンタッチを思い描いていることは明らかだ。裏を返せば党内保守派に軸足を置く高市と小林に関しては拒否表明したのも同然だった。高市は昨年の石破政権発足に当たって総務会長への就任を打診されながらこれを固辞。小林も広報本部長を断った。その後も折に触れて高市、小林は石破批判を口にしてきた。