
最後まで続投に強い意欲を持っていた首相の石破茂は、メディアを巻き込んだ「石破降ろし」の圧力に屈して退陣に追い込まれた。しかし、石破降ろしにはその後のシナリオがなかったことが浮き彫りになっている。その証拠に、ポスト石破を争う自民党総裁候補に5人が名乗りを上げた。候補乱立と言ってもいい。しかもいずれも1年前の総裁選に立候補した面々だ。
決選投票まで進んで石破に敗れた前経済安全保障相の高市早苗を筆頭に、農林水産相の小泉進次郎、官房長官の林芳正、元経済安保相の小林鷹之、前自民党幹事長の茂木敏充が名を連ねた。立憲民主党代表の野田佳彦が「敗者復活戦」と喝破した通りだ。5人に共通するのは「リベンジ立候補」の印象だ。
しかし、退陣表明直前の石破を巡っては内閣支持率が上昇し、世論調査でも「辞める必要はない」が多数を占めた。加えて衆参共に少数与党になった自民党の新総裁が首相になれる保証はない。さらに権力闘争の果ての新総裁は誰がなっても「怨念」が残る。
過去の例を見れば「不人気内閣」は目に見える。その混沌とした総裁選の行方を決める大きなポイントが、投票の方式を党員参加型のフルスペック方式にしたこと。この方式では所属する国会議員数295人と同じ295票が党員に割り当てられるため、党員票の行方が勝敗を左右する。しかも候補者が5人となれば、1回目の投票で勝敗が決することは考えにくい。昨年同様に決選投票に持ち込まれる可能性が濃厚だ。
となれば、まず1回戦で2位に入ることが必須。その上で行われる決選投票は国会議員の票数がものをいう。二段構えの戦略が必要となる。