スバルにとって、フォレスターは北米市場の屋台骨
スバルにとってフォレスターは、単なるポートフォリオの中の一車種ではない。
北米における台数と利益を支える文字通りの屋台骨であり、クロストレックの機動性とアウトバックの長距離適性の中間を埋める、もっとも「使いで」の良いSUVだ。
(あくまで北米においては)大きすぎず小さすぎず。雨でも雪でも何でもござれ、全天候型の性能と高い積載性。さらに見切りの良さと安全装備を一本に束ねる優れたクルマだ。
初代フォレスターはインプレッサの骨格に背を伸ばした“背高ワゴン”として登場し、見切りの良いガラスエリアと素直な操縦性で地歩を固めた。2代目で実用の密度を増し、3代目でSUVとして骨太に成長し、4代目からアイサイトを核に安全価値を磨き、5代目では新世代プラットフォームとX-MODEで悪路の安心と日常の快適を両立させてきた。ターボで走りに寄せた時期もあれば、自然吸気一本に絞った時期もある。何にせよ、「奇をてらわず、効かせるべき部分を効かせる」という身上は一貫している。
トヨタのハイブリッドシステムと水平対向エンジンを融合
激動の「トランプの時代」に生まれた新型フォレスターは、THS(トヨタハイブリッドシステム)を搭載している。量産の確かさをトヨタ方式で担保しつつ、スバルの「水平対向×AWD」で風味を出している。
電動化の“核”にトヨタ式ハイブリッドを据えたのは、無論実利を優先してのことだ。ストロングハイブリッドをゼロから自前で立ち上げれば、開発費は膨らみ、認証は長期化し、量産の初期不良という「学費」の支払いは避けようがない。読めない関税、乱高下する為替、高騰するインセンティブの“三重苦”が続く局面で、自力だけの正面突破は得策とは言えまい。
ならば、世界最高の実績を持つパワースプリット機構を“調達”する。そしてそこで浮いた資源を、スバル独自の水平対向+AWDの組み合わせで、制御の味付け、パッケージの現実解に投じる。
コア機構をトヨタと共用すれば、部材の調達から在庫、補修パーツの供給まで“極太流路”に乗ることができる。膨大なフィールドデータで鍛え抜かれたシステムは、立ち上がりの振れ幅を小さくし、保証や品質対応のコストの読みを容易にする。規制対応や燃費、排ガスのコンプライアンスの確度も上げられる。

スバル自慢の「水平対向×AWD」に、“トヨタの心臓”をどのように移植したのか。
スペックでは見えない差が、掌と尻と足先にどのように伝わるのか。
じっくりと確かめてみよう。