そういうことができるのも知性です。人間性の源といってもいいかもしれない。非常に知能が高い人はいろいろな問題を解決して直進していけるのでしょうが、それだけでは、人間性は生まれてこないわけです。

AI技術がさらに発展したら
知性まで獲得されてしまう!?

 私は、心というものをかなり包摂的な概念として扱っています。感情も意識も自我も創造も思考も判断もすべて心の一部である。知能は知性に含まれ、知性は心に含まれる。

 とすると生成系AIには知能はあるけれども、現段階では知性はなく、したがって心を創発するほどには知性の部分が足りていないということになるでしょう。

 逆に人間とAIの違いは、まずは知性の有無であると考えれば、人間を人間たらしめているものは知性であると言えるのではないか。

 そして知性に裏付けられる人間らしさは、周囲の人間との有機的なつながりによって発達する。

 ただし、だからといって無機的なAIは知性を持てないのだと断定することはできません。

 というのも、AIの技術がさらに発展したら、人間のそれとは別の形の「意識らしきもの」が出現し、そこから「知性らしきもの」が生まれる日が来るかもしれないからです。

人間の創造性も
過去からの学習に過ぎない

 知能とは「ある与えられた仕事ができる能力」である一方、知性とは、「想像力によって、与えられていない仕事を自分でつくりだせる能力」です。このように比べてみると、知能と知性の違いは「意思の有無」であるとも言えるでしょう。

 今の生成系AIは小説を書くこともできれば絵を描くこともできる、作曲だってできます。それが人間の創造性と何が違うのかと問うたときに、よく言われるのは「AIは過去の創造物を膨大に学習し、パターン認識によってアートを生成しているだけだが人間は違う。人間はゼロから創造することができる」ということですが、本当にそうでしょうか。

 人間にも学習機能があり、過去に触れてきたものの記憶が蓄積されています。おそらく真にゼロから何かを創造するというのは稀なことで、たいていは過去に触れてきたものにも大いに影響されて創造しているはずです。