また、料理をしながら読書をするのは難しいが、オーディオブックを聞くことと料理をすることは同時並行でおこなえるかもしれない。

 マルチタスクの成否が個々の状況次第というケースもある。具体的には、個人の能力と性格、そして要求される成果のレベルの影響が大きい。

状況に応じた
見極めが必要

 たとえば、会議中に電子メールを打ち、同僚の発言をきちんと聞かないというのは、つねに避けるべきことなのか。一概には判断できない。もし、会議の内容が自分にほとんど関係がないものだとしたら?長い会議の途中で、緊急な対応を必要とする電子メールが届いた場合は?

 マルチタスクを試みることが妥当かどうかは状況によるのだ。状況をよく考えて、どのような行動が最善かを判断しよう。また、こうした点に関して、あなたが仕事と私生活でどのようなやり方を好むかを、同僚や家族にはっきり示すことも重要だ。

 この表に記した以外にも、活動の組み合わせは無限にある。たとえば、別々の問題についてそれぞれ心配と反省を同時におこなうことは難しいかもしれない。実際、この点で苦労している人は多い。

 一方、状況によっては、複数の活動を同時におこなうことにより、成果が高まる場合もある。自由連想型の思考を通じて、集中して思考したときには思いつかないようなアイデアに到達できるケースもあるだろう。また、ある課題が簡単すぎて、ほかの課題と並行しておこなわないと、退屈して放り出したくなるケースもあるかもしれない(洋服をたたむだけでは退屈なので、ポッドキャストを聞きながら作業するようなパターンだ)。

 ときには、マルチタスクが認知能力を強化する可能性もある。ある実験によると、複数のメディアに同時に触れた実験参加者は、多感覚の統合(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感を通じて得られる情報を組み合わせて処理すること)で高い成果を挙げる割合が大きかった。