この誰得問題を解決するためにはBYDジャパンはこれまでよりも多くの流通対策費を投入する必要があります。つまり実質的に大幅値引きをしなければイオンをチャネルとして育てることが難しいのです。
「じゃあそうすればいいじゃないか?」と思うかもしれませんが、もうひとつハードルがあります。BYDは補助金で国や自治体から冷遇されているのです。
今、東京都の住民がBYDのドルフィンを購入しようとした場合、国の補助金は35万円、都の補助金も同じく35万円で合計で70万円しか補助は受けられません。これに対してテスラのモデルYなら国と都から合計107万円。日産リーフなら139万円の補助金が受けられます。
このようなハンディがある状態で「実質200万円前後」を出すためにはイオンの顧客に対してBYDジャパンは30万円ほどの独自値引きを提案できなければなりません。ここまでが計画の前提です。
ですからそのうえでさらに流通チャネルを育てるための販売奨励金を積み増すのは、経済性の面でさすがに難しいでしょう。結局、スーパーで自動車を販売するのは割高で非効率だという結論になってしまいます。
スーパー店頭で自動車を売る
たった1つの方法
ではスーパーの店頭でスーパーの販売員でも売れる車はないのでしょうか。ひとつだけ例外があります。それは、「よく知られた軽自動車」です。
軽自動車だったら何でも売れるわけではありません。よく知られた車種であることが必要です。そのうえで、そのよく知られた車種の新車が出たとします。ショールーム的にイオンモールにそれを置いた場合、比較的買う確率が高い顧客が触りに近づいてきます。それで気に入ったら、これは現実にはディーラーに再来店してということになりますが、次の買い替えのタイミングで比較的指名買いに近い形で成約します。
ここでの条件は3つあって、買い物として比較的安いこと、競合する選択肢と大差ないこと、そして2台持ちだということです。







