「旅館ブランドのグローバル化」に違和感
最近は「旅館ブランドのグローバル化」という言葉も聞くようになりました。海外に日本風の旅館を展開する話のようですが、私は違和感を覚えます。いくら建物を和風にしても、働く人がその土地の文化で育った人ならば、日本文化の本質を伝えることは難しいのではないでしょうか。結果として、それは「旅館風ホテル」であって、「旅館」ではないのです。
国内にある旅館が「本物の旅館文化」を守り続けることが、世界に誇る「旅館」のブランド構築につながるはずです。グローバル展開よりも、日本国内で旅館文化を大切にする宿を増やすことこそ、業界全体の価値を高める唯一の道だと考えます。
写真はイメージです Photo:PIXTA
2万5000円~で伝統スタイルは実現できる
当館の平均宿泊単価は、おひとり4万3000円ほどです。仲居による完全担当制や料理のお部屋出しを継続するために、相応の料金をいただいています。とはいえ、この料金帯にしないと旅館経営ができないわけではありません。2万5000円~3万円ほどの料金帯でも、工夫次第で十分に伝統的なスタイルは実現できます。
例えば、10品のうち6品をあらかじめお部屋に配膳し、残りのメイン料理は一品ずつお部屋出しするだけでも、旅館らしさは十分に伝わります。そうした方法なら、仲居ひとりが担当できる部屋数も増え、コストバランスを保てます。
各旅館が相応の料金帯で、どれだけ本物の旅館体験をお客さまに提供できるか、一生懸命に考えているでしょうか?高級宿と同じことをしなくても、その宿なりのやり方で旅館文化を伝えることは可能なのです。







