世界ランキング上位の名門大学だからこそ狙われた

 香港の大学教育のレベルは高い。英国の「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)の2025年最新ランキングで、香港大学は33位、香港中文大学は41位につけている(東大は26位)。また、やはり英国のクアクアレリ・シモンズ(QS)社が発表している「QS世界大学ランキング」でも、香港大学は11位、香港中文大学は32位、東京大学は36位に位置付けられている。

 さらに、THEの200位以内に香港からは6大学がランクインしており、対して日本からのランクインは東大含めて4大学のみ。そこから、これら世界的に認められた大学の存在は、人口わずか700万人余りの香港の誇りだということが理解できるだろう。

 だからこそ、中国国内からの注目度も高く、多くの入学希望が寄せられるのだが、昨今ではニセの学歴書類を使って「ハクをつけ」ようとする輩が横行していることも大きく注目されるようになった。

 中でも人気の香港大学ビジネススクールでは昨年初め、「ニセの学歴書類を使って入学を許された学生がいる」という通報を受けたのをきっかけに、1カ月余りをかけて在籍中の学生のみならず過去の卒業生の申告学歴をチェックした。

 香港以外の学歴を持つ学生の記録を出身校に照会した結果、30人余りの中国籍学生の入学前最終学歴が偽物だとわかったと報告。調査の担当者は、「最終的には100人ほどの学生が聞き取り調査を受けることになるだろう」と述べた。

米国の有名大学を出ているのに英語で受け答えができない!懲役刑を受けた学生も

 その中には、米国の著名な大学卒業の学歴を持ちながら、主に英語で授業を行う香港大学で英語のレポートが書けなかったり、英語でうまく受け答えができなかったりという学生も含まれていた。

 これを受けて、香港大学は一斉に学内すべての学部と大学院に在学生と卒業生の学歴チェックを開始。ある28歳の女性は、ニセの米国コロンビア大学卒業証書を使って修士課程に所属していたことが明らかになっただけでなく、自宅に「優秀な成績で卒業した」と書かれた香港大学のニセ卒業証書まで所有していたことも、家宅捜査で発見された。

 彼女は、「詐欺の手段で虚偽文書を取得し、それを使って香港入境の許可を不当に取得した」あげく、「虚偽の申告をしただけではなく、さらに虚偽の卒業証書まで隠し持っていたことは罪が重い」として起訴され、懲役240日の判決を受けた。

 ニセ学歴事件に激震したのは香港のみならず、隣のマカオもだった。マカオテクノロジー大学でも調査が行われ、ニセの学歴書類を利用して入学したことがわかった29人が放校処分になった。

 このうち、20人はさっさと中国に逃げ帰ったが、逃げ遅れた中国人学生4人が警察に逮捕された。彼らは、香港人学生が高校卒業時に受験する大学入学共通試験(HKDSE)を、マカオの大学も受け入れているのに目をつけ、そのニセ成績書類を提出したとされる。

 また、香港嶺南大学では、卒業の条件になっているTOEFLなどの英語レベル試験の「替え玉受験」も発覚した。停学処分を受けた3人の在学生はやはりいずれも中国出身で、英語レベル試験の成績証をメールで学校側に提出したところ、成績証の写真が当人と違うことに職員が気付いた。警察の取り調べを受けた3人は、仲介業者に身代わりを探してもらったと述べた。