2年半で卒業生含め55人逮捕、有罪判決も

 香港警察によると、2022年から今年7月までに同様の手法で大学の入学資格を取得したとして55人の(元)留学生を逮捕。逮捕時にはすでに当該大学を卒業していた人を含む9人を起訴し、うち6人が1年未満の懲役と罰金の有罪判決を受けている。

 取り調べを受けた「元」学生たちの証言から、こうしたニセ学歴で摘発されたケースの多くで中国国内の留学仲介業者がさまざまな形で暗躍しているらしいことが明らかになっている。

 例えば、江蘇省南京市の女性は香港マカオ留学紹介イベントで、「必ず入学できる。できなかったら返金する」と胸を張った仲介業者に70万元(約1500万円)を支払い、息子の香港大学への入学手続きを依頼。しかし、昨年息子が退学処分となり、その時初めて業者が米国の高校卒業証明と国際バカロレアの成績証明書を偽造していたことを知ったという。

 実際に処分を受けた(元)学生の多くが、仲介業者に入学手続きを依頼していたというケースが多く、その際に学歴が捏造(ねつぞう)されたという現実を知らされていなかった学生や親も少なくないという。前述の南京のケースでは業者は70万元を返金してきたというが、ほとんどの仲介業者は見て見ぬふりをしたり、「その学生の手続きを担当した職員のミスだ」などとごまかすらしい。

悪徳仲介業者の巧妙な手口

 学生と親の側がそんな仲介業者の手法にまったく気づいていなかったと言われても、にわかには信じ難い。だが、チェック調査を担当した香港大学の関係者も、メディアに対して「悪徳仲介業者の手口はかなり巧妙で、大学が再チェックするのも容易ではない」と語っている。

 それによると、学生側はまず仲介業者に学歴と入学申請書を手渡し、それを多少見栄えの良い形に書き換えてくれるのだろうと期待する。だが、実際には仲介業者はそれらの資料を、海外著名大学のトップ学生の成績表、卒業証書に書き換えて申請先大学に提出する。大学側はそれを見て申請学生に「仮入学許可」を出し、最終条件として「卒業した海外大学の正式書類」の提出を求める。

 だが、学生の連絡先はもとより仲介業者の住所になっており、届いた「仮入学許可」を手に入れた仲介業者は、その文面の「海外大学」の名前を学生が卒業した学校に書き換えて学生側に手渡す。同時にまるでかの海外著名大学の名前で、「成績表、学位証明、封筒、そして封印まで本物そっくり」な書類を作って、直接香港側の大学に送りつけるのだという。

 こうして、依頼人の学生と家族、そして大学側もその仲介業者の手の込んだ手法に騙され、お互いに何も知らずに大喜びで大学生活に入る――それがパターンだったらしい。