香港当局も本格取り締まりへ、しかしニセ学歴書類は増加中

 だが、ニセの学歴書類の横行を許せば、今後香港の大学の国際的な信用にも関わることになる。それは、一所懸命勉強してその入学資格を手に入れ、晴れて香港の大学生となった中国人学生たちに対しても不公平である。

 香港教育局はもちろん、ニセ学歴使用者に対して「絶対に容認しない」とする姿勢を示し、香港政府も起訴はされなくても一旦ニセ学歴書類を使用したことが証明されれば、取得した学歴は取り消され、香港からは追放、さらには出入境事務所にも記録が残るため、今後の香港への入境が難しくなるとの警告を発している。

 香港保安局は昨年末、取り調べを通じてリストアップした悪徳仲介業者14機関の資料を中国当局に手渡したとしている。業者の中には幅広い留学仲介を行っていたところも含まれていたが、その後取り締まりを受けたのだろう、運営がストップしたと報道されている。

 だが、それでも、ニセ学歴書類の提出は止まず、逆に今年発見された数は過去最高となった。もちろん、今年は香港全体で10万近い、海外からの入学申請があり、摘発されたニセ書類は全体を合わせても1000件には満たないが、それでも「まだチェックの目をかいくぐったケースがあるのでは」という疑念の声は止まない。

 偽造チェックに関わった大学関係者によると、ニセ書類はかなり凝った作りになっており、大学側も照会に四苦八苦しているという。前述したように見た目が海外大学の本物そっくりなだけではなく、そこにある「問い合わせ先」に問い合わせても、ニセ書類を作成した仲介業者に直接届くように細工されているのだそうだ。

 今年の入学申請で発見されたケースには、なんと中国国内に存在しない高校の名前を書き込んだ書類もあったという。実在しなければ、照会のしようがないと踏んだのであろう。

 加えて、香港では近年、海外や中国の著名大学を卒業した優秀人材の誘致計画も進めているが、こちらでも仲介業者を介したとされるニセ学歴、ニセ資料が発見されており、中には業者に250万元(約5000万円)を支払ったというケースも報告されている。このため、政府機関である公的学術および職歴評価チェック局(HKCAAVQ)への調査依頼が激増しており、うち中国国内出身者に関するチェック請求は昨年1年間だけで倍となった。

日本の大学も他人事ではないのでは?

 こうした現実を前に、筆者は不安になった。「日本でも激増する中国人留学生の中に、同様の手法を使っている者はいないのだろうか?」と。

 いや、留学生追放を叫びたいわけでは決してない。だが、現実に悪徳仲介業者が暗躍している限り、日本も完全に安全だとはいえないのではないか。

 日本の大学や受け入れ機関は、手にした資料をそのまま信用するのではなく、きちんと照会するのを忘れないでいただきたい。それは、真面目に勉強し、努力して優秀な成績を収めてきた、本当に優秀な中国人学生を守ることにもつながるのだから。

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