家賃も物価も高いニューヨークに、ひーひー言いながらそれでも住む人のホンネとは?写真はイメージです Photo:PIXTA

摩天楼のきらめきの裏には、物価の高騰や激しい競争がひしめくニューヨーク。ニューヨーカーまでもが「住みにくい街」とこぼす一方で、なぜか離れられない人がいる。30年近くこの街に暮らしてきた著者が、それでもニューヨークに住み続ける理由を語る。※本稿は、佐久間裕美子『今日もよく生きた ニューヨーク流、自分の愛で方』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

物価が高く競争も激しい
ニューヨークで見つけた居場所

 あと少しで、自分のニューヨーク在住歴は30年になるらしい。らしい、と他人事のように言いたくなるのは、自分が一番、それを信じられないからだ。

 ニューヨークにずっと暮らすのだ、と決めたことはない。目の前に現れるあれこれをアワアワと処理しているうちに、光のごとくすぎてしまった、というのが実感だ。

 成人してからほとんどの月日を、この街で過ごしてきた。仕事でも、ニューヨークやアメリカのことを、日本の人たちとシェアすることを生業としてきた。常に何かが起きていたからネタに困ることはなかったし、飽きた、と思ったことはない。

 が、それ以上に、街で出会う人々から教えてもらった教訓がなかったら、自分は今のような気持ちで生きていけなかっただろうと思う。

 社会にうまく馴染めないと思っていた自分を大きな包容力で迎え入れ、肯定してくれた場所。そして、昔も今も、生き残り方、闘い方を教えてくれる。そういう場所なのだ。

 自分にとっては、いつしかリラックスできる「ホーム」になったわけだけれど、一般的にはニューヨークは物価が異常に高く、貧富の差が激しいタフな街、ということになっている。