私のまわりで、長くニューヨークに住み続けている人たちにも、やっぱりそれぞれの天使の守護団がいて、だからみんな、いまだにニューヨークでやっていけているのだろう。

住みたいと思える街は
いまだに見つからない

 ニューヨークで生き残るために、必要な要素って何だろう。モチベーション、根性、大望、強靭な精神力、ある程度の競争精神、楽観主義、ある程度の厚顔、愛、そして運。

 私がニューヨークに暮らしている間に、去っていく人たちとの無数のお別れを経験してきた。

 急に家賃が上がることになった、ドラッグや毒性の強い恋愛に溺れてしまった、商売に失敗して生活を維持できなくなった、長すぎる冬にうんざりした、ビザが更新できなかった、と離脱の理由も、やってくる理由同様、またいろいろだった。

 そういえば、若い頃、友人たちがどんどん成功していくのを横目にちょっと不貞腐くされ気味だった時代がある。その頃、よく一緒にくさっていた男友達と、人生をカードゲームに例えていた。

 才能があって努力をしていても、成功できるとは限らない。どんな札を引くかにもよるのだ。

 彼は数年前に故郷近くの街に引っ越していった。「これがオレが引いた札なんだ」と言いながら。

 自分にもいつかそういう日がやってくるだろうか?と考えることはよくあったし、去っていく人を、「住みたい街を見つけたんだな」と羨望の気持ちで見送ることもあった。

 若い頃はニューヨークは、年を取ってから住む場所としては辛い場所のように思えたし、いつかはどこかに行くのだろうと漠然と考えていたから、行く先々で、「ここなら住めるかな?」と考えるのが常だった。

 けれど、これまでのところ、自分にとってニューヨークからよっこいしょと離れるだけの理由になるような場所には出会えていない。

刺激的だった毎日が
恋しくなる人も

 最近、ニューヨークを離れる人たちのデスティネーション(新天地)のひとつにメキシコシティがある。物価が相対的に安く、文化があって、かつてのブルックリンを思わせる刺激があるのだ、と言われている。