海外での仕事経験は
自分を大きく飛躍させる

 グローバル体験には、人を大きく成長させる要素が詰まっている。なかでも特に重要なのが、柔軟性と適応力だ。

 日本を飛び出し、海外の未知の環境に身を置けば、日々が挑戦の連続となる。

 これまでの常識や経験が通用しない状況に直面し、まるでクラシック音楽から即興性が求められるジャズに挑むようなものだ。暗記力や正解を導き出す能力ではなく、瞬時に状況を読み解き、即座に行動する力が試される。

 ここで、日本と世界における「頭の良さ」の基準の違いに注目してみよう。

 日本では、「決められた正解を正しく答えられる人」が優秀とされることが多い。テレビのクイズ番組などはその典型だ。だが、世界では異なる。そこでは、問題を見つけ、常識を疑い、新しいルールやシステムを生み出す能力こそが求められるのだ。

 ビジネスの世界でも、いわゆる「ゲーム・チェンジャー」と呼ばれる革新者たちが、新しい市場を切り開いている。たとえば、音楽業界ではCDやDVDから「サブスクリプション」モデルへの転換が進み、ゲームのルールそのものが塗り替えられた。

 もはや「正しい答え」を導き出すのはAIの仕事。人間に求められるのは、AIに適切な問いを与え、新たな視点を生み出す力だ。

 グローバル体験は、まさにこの「即興力」と「問いを生み出す力」を磨く絶好の機会だ。新しい環境に飛び込み、自らの常識が通用しない世界で試行錯誤を繰り返すことで、AI時代を生き抜くためのスキルが身についていく。

 さらに、グローバル体験は、自分の信念や価値観、つまり「自分軸」を育む機会でもある。

 松尾芭蕉が説いた「不易と流行」という言葉がある。不変の本質を見極めながら、変化に適応する力――まさに、グローバルな環境に身を置くことで、この複眼的な洞察力を実践的に身につけられるのだ。

 異なる文化や価値観との衝突を経験することで、自分自身の考えが研ぎ澄まされ、他者と比較することで「自分にとって何が大切なのか」が明確になっていく。