2 「上司にかわれ」という要求への対応
「上司にかわれ」と言うカスタマー側の意図は、より高次の例外的な判断をしてほしいということでしょう。上司にかわれという要求自体はハラスメントでもなんでもありません。企業側としてかわるべきだと考えれば、かわってかまわないのです。

 しかし、対応方針(返金する・しない)が変わらないのであれば、上司にかわる意味はまったくありません。

 上司にかわらない理由は「私が責任者であるから」です。カスタマーは「部門の責任者か?経営の責任をすべて負っているのか?」などと追及してくるものですが、「この件の責任者は私である」と一貫して説明するだけでかまいません。

 担当者→課長→室長と、特に理由もなく上司を出してしまうと、冗談抜きに最後は社長を出さなければならなくなってしまいます。

3 レシートや現物がない場合の対応
 ハナマル製菓にとっての責任ある対応とはなんでしょうか。

『実践カスタマーハラスメント対応ケーススタディ』『実践カスタマーハラスメント対応ケーススタディ』(日本能率協会コンサルティング 経団連出版)

 今回は「包装が破れていた」「味がおかしい」という主張があることから、いつ製造した商品にそのような問題があり得るのかを調査することが、ハナマル製菓にとっての責任ある対応であるといえます。したがって、少なくとも現物が残っている自宅用の1箱を回収し、その対価として返金することは、責任ある対応だといえます。

 一方、レシートがないお土産用の5箱については購入の事実が確認できないため、返金してしまうのはまさに無責任な対応だといえます。カスタマー蒼井への責任ではなく、広く顧客全体に対しても、また誠意をもって日々製品を作り続けている従業員に対しても、無責任な対応です。

4 特別対応をすべきか
「以前はやってくれた」という主張も、多くの企業で担当者を迷わす典型例といえます。以前は行っていたという事実が本当にあったとしても「それはそれ、これはこれ」であり、以前行っていようがいまいがまちがった対応は繰り返さないことが重要です。