「マニュアルをちゃんと読んでいたことと、普段からいろいろな事例について解説してもらっていたことが役に立ちました。次回からも、このような対応を心がけます!」。山田は安堵の表情を浮かべて言った。

 相談室は平常の雰囲気を取り戻し、3人はそれぞれの業務に戻るのだった。

この「カスハラ」ケースにおいて
考えるべき4つのポイント

「レシートや現物がなければ返金できない」というハナマル製菓の方針を超える要求をし続け、同じ話の繰り返しに終始し、結果的に長時間に及ぶ対応になったことから、カスタマーハラスメントであるといえます。

 カスタマー蒼井の言い分にも共感できる点はありますが、あくまでもハナマル製菓として責任ある対応を貫くことが重要なケースです。

 今回のケースでは、特に以下のような点について考える必要があります。

1 カスタマーの言い分や心情にどう寄り添うか
 気持ちはわかる面があり、うそをついている様子も見られませんが、カスタマーの主張の何を認め、どう向き合うべきでしょうか。

2 「上司にかわれ」という要求への対応
 上司にかわるのはどのような場合でしょうか。あるいは、かわらない理由は何でしょうか。

3 レシートや現物がない場合の対応
 商品を購入したという事実の確認や品質の調査を進めるにあたり、レシートや商品の現物がない状況でどのように対応すればいいでしょうか。

4 特別対応をすべきか
 企業の規定や方針を超える対応の要求にどこまで応えるべきでしょうか。または応えるべきでないでしょうか。

各ポイントにおける
ベストの対応とは?

1 カスタマーの言い分や心情にどう寄り添うか
 特にうそをついている様子はないように思われますが、受け止め方は人それぞれです。そもそも「うそかどうか」「悪意があるか」など、カスタマーの内心はわかりようがないのです。したがってカスタマーが思っていることについて「ご心配をおかけした」「お気持ちはわかります」と寄り添うことには問題はありません。

 一方、返金する・しないという判断にあたっては、カスタマーの心情は考慮しない方が一貫した対応ができるものです。つまり「何をいくつ購入したか」が重要なのです。カスタマーが「信じてほしい」と思うのは当然ですが、購入した事実が確認できないのに返金してしまうことは無責任な対応であるといえます。