「なぜなぜ攻撃にも動じませんでしたね」。入江は感心した。
「理由を説明しつつ、最終的には『ホテルとして決めていることだから』と伝えることが大切なんだ。いくら『なぜ』と聞かれても、それ以上の回答はないからね」と山本は語り、2人は満足げな表情で次の客の対応に向かうのだった。
この「カスハラ」ケースにおいて
考えるべき3つのポイント
ホテルには様々な宿泊プランがあるものですが、今回は、チェックアウト時刻を早めに設定して通常より安価な料金としているケースでの出来事です。宿泊客であるカスタマー桃井は、10時チェックアウトのプランで宿泊しましたが、オンライン会議が長引いたことで超過料金を請求され、腹を立てています。加えて、会議中に客室係に入室されたことにも腹を立てています。
会議が延びたために、チェックアウト時刻に間に合わなかったという事情には仕方がないと思う面はあります。しかし、ホテルとの約束事であるチェックアウト時刻を守れなかった以上、規定の追加料金を払う必要があります。
にもかかわらず、桃井は「なぜ」という問いを重ねて、ホテル側の時間を奪ってしまっています。ホテル側の誠意・責任ある対応の範囲を超えた長時間の対応を強制してしまっている点で、このケースは明らかにカスタマーハラスメントであるといえます。
今回のケースでは、特に以下のような点について考える必要があります。
1 「なぜ」にどこまで対応すべきか(規定やホテル側の対応の理由をどこまで説明すべきか)
2 「なぜ」に答えきれないからといって「特別対応」する必要があるか
3 「特別対応」の最大の問題点は何か
繰り返される客からの「なぜ」に対しては
「総合的判断で決めています」で問題なし
極端に言えば、「なぜ」という問いに何も答えなくても特段問題はありません。もちろんホスピタリティが重視されるホテルですから「理由はお答えしません」という対応はないと思われます。しかし、たいていの判断や決めごとは、「なぜ」を3回繰り返せば、「そう決めたから」もしくは「本題から外れた会話」に行き着くものです。







