例えば、チェックアウト時刻を過ぎるとなぜ追加料金が発生するのか。
→客室清掃の所要時間が延びて人件費が増えるから
→12時チェックアウトとの差額は1500円しかないのになぜ追加料金は1時間あたり2500円も取るのか
→人材派遣の清掃係なので時間単価が高いから
→なぜそんな高い人材派遣を使っているのか
→ホテルの正社員だけではまかないきれないから
→なぜ正社員の採用を増やさないのか
など、きりがありません。
一度「なぜ」に対して回答するのはかまいませんが、重ねられた「なぜ」に対しては、「総合的判断で決めています」と答える程度で問題ありません。今回のケースで言えば、「10時チェックアウト、超過1時間あたり2500円とのお約束でご利用いただいているからです」だけで問題ありません。
不適切な「特別対応」は
百害あって一利なし
「なぜ」を繰り返すことに意味はありません。「なぜ」に答え続けようとすればいずれ行き詰まることになり、結果として論破されたように感じてしまいます。
しかし、「なぜ」に答えきれないからといって「特別対応」をする必要はまったくありません。今回のケースで言えば、追加料金を支払ってもらう必要があるということを伝え続けるだけでいいのです。無銭飲食に似たケースですから、支払ってもらうまではお帰りいただけないとするか、警察を呼ぶとするかなどは、ホテルの判断で決めましょう。
『実践カスタマーハラスメント対応ケーススタディ』(日本能率協会コンサルティング 経団連出版)
事前にクレジットカード情報を把握する方式の場合は「お客さまのクレジットカードにご請求申し上げます」でもかまいません。ホテルという特性上、客との摩擦を避けたい意図はわかりますが、不適切な「特別対応」は百害あって一利なしです。
カスタマー桃井は実は過去にも同じような対応を要求し成功しています。「特別対応」の問題点は、カスタマーに不適切な「成功体験」を与えてしまうことです。
もちろん「以前は特別対応したが、まちがった対応だったので今後はお断りする」でかまわないのですが、桃井からすると「このホテルは強く言えば折れる」と思っていたかもしれません。
根拠があいまいで、その場しのぎの「特別対応」は、客にあしき成功体験を与えてしまいます。従業員の誇りを奪ってしまう面もあるため、絶対に避けるようにしましょう。







