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コスト削減や人手不足の解消を目的に、モバイルオーダーの導入が進む飲食店が増えている。若い世代はデジタル注文を難なく使いこなす一方で、携帯の操作に慣れない高齢者の中には、戸惑いや抵抗を示す人も少なくない。中には、そうした不便さを理由に店へ苦情を申し入れるケースも見られる。「デジタル化」の波の中で、店はどのように対応すべきなのか――。※本稿は、日本能率協会コンサルティング編著『実践カスタマーハラスメント対応ケーススタディ』(経団連出版)の一部を抜粋・編集したものです。
モバイルオーダーに
抵抗を示した年配客
「ラ・トラットリア」の入り口ドアを開けると、カウンター付近に立っていた山田美香が笑顔で出迎えた。
「いらっしゃいませ」
「あら、美香さん。電話で予約はできないって言われたから直接来てみたの。3人で食事はできるかしら?」。白川恵子は友人2人を伴って店内に入った。
美香は常連客の白川だと気づいた。「あ、白川さん。お久しぶりです。ええ、今なら大丈夫ですよ。こちらの窓際のテーブルはいかがですか?」。
白川たちは案内されたテーブルに着席した。窓際の日当たりの良い席で、友人たちも満足げな様子だった。
「白川さん、実は先週からモバイルオーダーシステムを導入いたしました。スマートフォンはお持ちですか?」。美香は丁寧に説明した。「このQRコードをスマートフォンで読み取っていただくと、メニューが見られて注文もできるんですよ」。
白川は困惑した表情で美香を見上げた。「モバイルオーダー?そんな難しいこと、私たちにはできないわよ。今までのメニューは見せてもらえないの?」







