ロボット産業競争は今どうなっているのか
現在、世界のロボット関連分野への成長期待が急上昇している。ロボットとは、(1)センサー、(2)AI(人工知能)およびそれを使った制御、(3)駆動機構を備え知能化した機械システムと定義できる。主なタイプは、ヒューマノイドと呼ばれるヒト型、四足歩行の動物型などだ。
現在、米中両国で収益が出ていないスタートアップ企業を含め、期待先行で資金調達や買収が急増している。先行するのは中国だ。2024年末時点で、ヒューマノイドのプロトタイプを公開した企業の50%は中国だった。20%が米国、10%が日本、その他の国や地域が20%だった。わが国も一定の存在感を示している。
中国ではひとりっ子政策による労働力の減少を補うために、政府が積極的に産業補助金をロボット分野に投入している。アリババ、ファーウェイ、バイドゥ、テンセントといったIT大手は、ロボット開発の基盤(プラットフォーム)を構築。自前で各種ロボットを開発し、新興企業への出資を増やしている。一方で、新興企業による大手企業の買収も起きている。
米国では、テスラ、エヌビディアなどがロボット関連事業を急速に拡充し始めた。イーロン・マスク氏は、人間の脳の研究を加速させているという。その成果をロボットと結合すべく、テスラは自社チップを開発し、EV(電気自動車)の生産ラインや車載用ソフトウエア基盤の応用に取り組み、「オプティマス」と呼ばれるロボット事業に注力している。
マイクロソフトは医療用ロボット、アマゾンは物流施設を管理するロボットの実用化にも取り組んでいる。オープンAIは、AGI(汎用型の人工知能)の普及にロボットを重視している。
わが国では、主に数値制御装置の製造技術を磨き、それを産業用ロボットに結合してきた企業が多い。マイクロソフトは昨年、東京・品川にある日本法人内に、日本企業が持つロボットの駆動・制御に必要な知見・製造技術を取り込むために研究拠点を新設した。今般のソフトバンクグループによるスイスのロボット事業買収にも、期待が高まっている。







