自動車、物流、創薬、安全保障での実用化は?
「ロボットはAIというソフトウエアを、実社会に実装するための重要なデバイス」との見方は増えている。世界のAI分野は、推論モデルから「フィジカルAI」開発にシフトし始めた。
推論モデルが作動するのは、コンピューターの中だ。それに対して、人型ロボットなら、例えば転倒した場合に自分で立ち上がる。このように状況の変化に対応できるAIが、フィジカルAIだ。ロボットや自動運転技術の実用には、より多くのデータセンターが必要になる。そのため、オラクルに対しての成長期待も一段と上昇している。
特に需要拡大が期待される分野は、サプライチェーンの管理を含めた、自動車製造などの自動化・省人化だろう。中国ではBYDが電動車の生産施設の8割をロボットで自動化した。溶接など危険な工程では、ロボットが95%程度の作業を担っているという。わが国でも、自動車や工作機械の生産で産業用ロボットの導入は加速している。
米国ではアマゾンが、AIの指示でロボットが在庫管理や配送を行う次世代物流倉庫を公開した。世界的に人手不足が深刻化する中、ロボットの積極活用で労働力に頼らないビジネスモデルを確立しようとしている。
あるいは創薬の分野でもAIとロボットを重視する企業が出始めた。香港とボストンに拠点を置く創薬スタートアップのインシリコンは、香港の研究拠点で人型ロボットによる研究所の運営に着手した。ヒトが関与することなく、AIとロボットで創薬を完結させようというのだ。
安全保障分野でのロボット利用を念頭に創業した企業もある。米ボストン・ダイナミクスは、関連分野での偵察、監視、物資輸送を目的に四足歩行やヒト型ロボット開発に取り組む。同社は、武器としてのロボット利用を禁止しているが、数年前にはフランス軍の模擬戦闘訓練に犬型ロボットが参加したことが明らかになっている。
人間が行ってきた単純労働、あるいは危険な業務を機械に代替させることで、企業は、労働力確保と維持のコストを低減できるだろう。ロボットが人間を守り、世話をするような新しい需要ができれば、産業の成長を加速する。それが、世界のIT大手が狙う事業戦略だ。







