たとえばあなたが休日に街中を歩いているとき、重そうな荷物を抱えているおばあさんが目に入ったとしても、「助けたい」とは思うかもしれませんが、「大成功するチャンスだ」とは思わないはずです。それと同様に、きっと青年も「チャンスをつかみにいこう」として助けたわけではありません。

 たぶん、青年はいつでも困っている人がいたら助けていたんだと思います。

 彼は困っている人を見ると放っておけなくて、いつも手伝ってあげていた。横断歩道でおばあさんをいつものように手助けしたら、たまたま大富豪だった。

 そういうことなのです。

 これが「チャンスを逃さない人」の本質だと思います。

チャンスをつかむ人は
仕事を選ばない

 先ほど、「チャンスというのは思いもかけずある日、突然、誰にでもやってくるもの」と書きました。

 チャンスは「やってくる」ものです。

「自分からつかみにいく」ものではありません。

 この前提を履き違えてしまい、「出世や成長のチャンスになりそうな仕事」ばかりを追いかけ、ビジネス人生を失敗してしまった人たちを、私はたくさん見てきました。

 つまり、「いつやってくるかわからないチャンスを見逃さない」ために最も必要なことは、青年のような「地道な準備」に限ります。

 冒頭の有名人たちの言葉を見返してみてください。チャンスの本質は「地道な準備」にあることを、たしかに説いています。

 チャンスをつかむための地道な準備――その1つが「巻き込まれる」ことです。

「巻き込まれる」とは、「頼まれごとをされる」ということ。

 そこに、「仕事を選ぶ」という行為は存在しません。

 頼まれたことを引き受けて巻き込まれ、地道に誠実に対応していると、評価や信頼が自分のもとに集まってきます。

 そして、その評価や信頼が、チャンスを自然と運んできてくれるわけです。

「ギャグ漫画の巨匠」としてつとに知られる赤塚不二夫さんですが、じつはデビュー作は「少女漫画」でした。当時は「ギャグ漫画」というジャンルがなかったために、依頼されるのは少女漫画ばかりだったのです。