万博の成功とは、単なる収支の黒字を指すのではない。万博をきっかけに、大阪で新たな都市開発が実現し、中長期的な経済の活性化につながるかどうかだろう。前大阪府知事・前大阪市長の松井一郎氏は、「万博は大阪の将来を左右する」「東京と肩を並べられる大都市・大阪をつくる」と繰り返し述べてきた。だからこそ、短期的に万博の成否を結論付けるのはおかしいと言える。

大阪の不動産市況
新規需要は増えていない?

 それでは、現在の大阪の景気を、不動産市況から探ってみよう。資産インフレを受けて、不動産価格は上昇し一見好調に見える。梅田エリアのキャップレートは東京とほぼ同水準で、オフィスビルはほぼ満床だ。

 しかし、梅田/淀屋橋・本町/心斎橋・難波/江坂の地区別にみると、梅田エリア以外は賃料が2005年の水準より上がっているのは梅田エリアだけで、それ以外のエリアはむしろ下がっている(グラフ「大阪の各エリアのオフィス賃料指数の推移」参照)。つまり、JR大阪駅周辺では大型再開発が進むが、梅田へ玉突きのオフィス移転が進んでいるだけで、肝心の新規需要は増えていない。中小ビルの跡地には、急増する訪日外国人(インバウンド)向けのホテルとレジデンスばかりが建っている。

 大阪が地盤沈下しないためには、新たな成長産業を作り出すことが肝心である。その鍵を握るのが、夢洲に建設される「統合型カジノリゾート(IR)」だ。現在、2030年開業を目指して整備が進む。

夢洲で2030年開業を目指す
大阪カジノIRの採算性が心配

 だが人手不足で建築費が高騰し、当初計画では1.3兆円だった初期投資が、1.5兆円へ膨らむなど採算性が心配される。さらに、世界的な物価高・値上げはカジノ業界にもおよんでいる。1回の最低賭け金額がどんどん高くなっていて、マカオでは約1万円、韓国でさえ約5000円が当たり前のようにになっている。

 日本人の金銭感覚では、初めてカジノで遊ぶには抵抗がある額だろう。日本人がカジノにお金を落とす額が計画よりも少なくなれば、見込んでいた税収および周辺都市開発は画餅になりかねない。