大阪観光局が突然「F1」誘致発表の謎
吉村府知事は5年ぶり2回目の“本気”!?
大阪観光局は1月23日、「F1の誘致を目指す」と発表した。突然のことに、府民の間では動揺が広がっている。大阪観光局は「民設民営」を強調するものの、一般的には「大阪市や府が主導しているのでは?」と疑う傾向があっても仕方ないだろう。
というのもF1は、2019年2月に当時の吉村大阪市長(現府知事)が、「万博開催後の夢洲に誘致したい」とSNSで発信したのが最初だ。その後、委員会などで正式に検討された様子はないが、22年6月に「大阪市が内々に検討していたが、採算が取れないとして誘致を断念していた」と報道されている。きっと、吉村氏は本気だったのだろう。今回は5年ぶり2回目のF1誘致表明となる。
目下、大阪府・市はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の区域整備計画を進めている。海外では、カジノやIRとくればF1など自動車レースを想起する人は多い。実際、シンガポール、ラスベガス、マカオなどカジノがある都市では自動車レースが開催されている。
かつてシンガポールでは、SARS(重症急性呼吸器症候群)で落ち込んだ観光業をV字回復させようと、F1誘致、世界最大級の観覧車建設、IR開業をワンセットとした観光政策を猛烈に進めた。新型コロナウイルスで大打撃を受けたラスベガスは23年11月、約40年ぶりにF1を開催している。
日本人からすると、それらは全て似たようなプロジェクトに見えるかもしれない。行政分野で“アイデアマン”と言われている人なら、「カジノの次はF1だ!」とぶち上げたくなるのだろう。しかし、両者の間には、天と地ほどかけ離れた明確な差がある。カジノは地元に「カジノ税」という多額の税収をもたらす「タックス・ペイヤー」であるが、F1は行政が多額のコストを負担する「タックス・イーター」なのだ。