不登校児の親たちが
PTA役員に選ばれる理由

 そのときに、不登校の子どもの親がターゲットにされることがあります。子どもが不登校になると、仕事を辞めたり、働き方を変えたりする親が多いです。そのような親だからこそ、平日の昼間に時間をつくって委員活動ができるだろうと思われ、委員に推されることがあるのです。

 不登校の子どもの親からは、子どもが学校に行っていないんだからPTAは関係ないのだろうと思って委員決めに参加しなかったところ、知らないうちに委員にされていたなんて話を何度も聞いたことがあります。

 もちろん、一度決まった委員を変えたり辞めたりすることは難しいため、子どもは不登校で学校に行っていないにもかかわらず、親はPTA役員として1カ月に数回学校に行っているような状態にもなるのです。

 しかし、PTAはそもそも任意団体ですので、加入や会費の支払いを強制することは違法行為です。もちろん、本人の同意なく委員・係を押し付けることもできませんし、委員・係を断ったとしても、それによって子どもに不利益が生じるような対応をされることはありません(もしあればそれは組織側に問題があります)。

『不登校のあの子に起きていること』書影『不登校のあの子に起きていること』(髙坂康雅 ちくまプリマー新書、筑摩書房)

 そのため、子どものためだからといって無理にPTAの委員を引き受ける必要はなく、余裕がなければ断ってもよいのです(時々、PTAを機に不登校の子どもの親同士が知り合うという不思議な現象はありますが)。断れるものは断ることが、親のストレスを低減させるためにも、必要なのです(もちろん事前に相談しておいた方がよいですが)。

 このように、子どもが不登校になったときには、さまざまな困りごとが生じてきます。

 これを減らすためには、子ども本人や親が学校に相談をしたり、交渉したりする必要があります。NPO法人「多様な学びプロジェクト」では、不登校の子どもの親を対象にしたアンケート結果をもとに、「学校への依頼文フォーマット」を作成しています。この依頼文をもとに学校に相談や交渉をすることで、その子どもにとって適切な学校との関わり方やつきあい方ができるかもしれません。