スピルバーグ少年がいじめっ子に伝えた「意外すぎるひと言」Photo:Mark Sennet/gettyimages

敵対する相手と争う場面に直面することは、多々あるだろう。しかし、勝ちを目指すばかりが解決策ではないと筆者はいう。協働する状況に持ち込めば、敵対者の力を吸収し、より有益な結果へと導くことができるのだ。スピルバーグ監督やリンカーン大統領も駆使した「コラボ戦略」のテクニックを、「フリップ(反転)思考」の提唱者である筆者が紹介する。※本稿は、ベルトルド・ガンスター『ひっくり返す(FLIP thinking)人生も仕事も好転する「反転」思考術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

勝者の側に立ったつもりでも
実はカモにされていた少年たち

 ある学校で、上級生の男子児童たちにしょっちゅうからかわれている少年がいた。彼に、5セント硬貨と10セント硬貨のどちらかを選べと言うと、いつも「大きいほう」の5セントを選ぶので、みんながそれをばかにしてあざ笑うのだった。

 その少年の担任教師が彼に、10セント硬貨のほうが5セント硬貨より価値が高いことを説明した。すると少年は言った。「わかってます。でも、僕がそれを知ってるって彼らが知ったら、もう僕にお金をくれなくなりますよね」

 私たちは、敵(と思われる相手)と向き合うと、権力争いに巻き込まれがちだ。パワーゲームはどのように行われるのか?

 それは単純で、相手を脅して降参させ、十分な力があれば、屈服させる。勝ったほうが自分の望むものを手に入れ、争いは終わる。もし相手のほうが自分より強いとわかったら、不運としか言いようがない。しかし、どちらに転んでも争いは解決する。これが勝者総取りモデルだ。