芸能界の人間にとって、メディア露出は生命線だ。どんな評判でも、取り上げてもらえるのは良いことだとも言われるように、最悪なのは、まったく取り上げられないことである。

 念力でスプーンを曲げることができる「メンタリスト」ユリ・ゲラーは、何年にもわたって、ジャーナリストから非難を浴びていた。ゲラーの批判者として最もよく知られていたジェームズ・ランディ(訳注/超能力や超常現象の嘘を暴く活動に生涯を捧げたマジシャン)は、ゲラーについて数冊の本を書き、ゲラーを徹底的に糾弾した。

 これほどまでの激しい非難がどのような影響を及ぼしたかというと、ランディの意図とは正反対のものだった!ユリ・ゲラーは偽物なのかというマスコミの永遠の議論が、彼の成功に大きく貢献したのだ。大いなる注目、話題、噂のおかげで、ユリ・ゲラーの名前は伝説の域に達していた。

コラボ戦略をさらに活用する
「敵対する相手に頼る」方法

 コラボ戦略のもうひとつのバリエーションは、敵の良いところに訴え、助けやアドバイス、あるいは頼みごとをする作戦だ。たいていの人間は自分の良い面を見せつけたくて仕方がないものだ。

 スティーブン・スピルバーグは13歳の頃、いつも近所の、ジョン・ウェイン似の、体格のいい少年にいじめられていた。「芝生に押し倒されたり、頭を水飲み場に押さえつけられたり、体育のフットボールで顔を地面に押しつけられ鼻血を出したりした」とスピルバーグは振り返る。彼は、この少年とケンカしても絶対に勝てないと思い、別の方法を試すことにした。

 少年に頼みごとをしたのだ。その頃すでに映画づくりをしていたスピルバーグは少年に言った。「ナチスと戦う映画をつくりたいんだが、この戦争の英雄を君に演じてほしいんだ」。すると少年は、最初こそ、露骨にあざ笑ってきたが、あとで、役を引き受けると言い、最終的には、撮影中に他のあらゆる作業も手伝ってくれた。そしてしまいには、スピルバーグの親友となった。