コラボ戦略は、私たちの敵対するエネルギーを、共通のゴールへと導くものだ。違いはあまり重視せず、共通点を重視する。この戦略は、敵対的な相手だけでなく、中立的な相手、あるいは友好的な相手にも適用可能だ。敵も、敵に見える相手も、その実態は千差万別である。したがって、それぞれに応じた、いくつかの異なるアプローチ、いわば「サブ戦略」がこの戦略の中に存在する。

敵も味方も効果的に動かせる
Win-Win関係のコラボ戦略

 コラボ戦略と取り込み戦略は、一見似ているようで、じつは重要な違いがある。

 取り込み戦略では、敵対する相手を仲間に引き入れるが、コラボ戦略の場合は、相手は独立したままで、パートナーとして協働するのだ。それにはいろいろなやり方がある。中でも最も好ましいのが、最終的に双方に恩恵をもたらすWin-Winの解決策だ

 世界には、医薬品よりもコカ・コーラのほうが簡単に手に入る地域がある。おかしな話だが、それが現実なのだ。ならば、世界最大の清涼飲料水ブランドが持つ、驚異的に広い流通網に便乗してはどうだろう?これが、コカ・コーラの流通システムを利用して下痢止めパッケージをザンビアの僻地に輸送する、ColaLifeイニシアティブのアイデアだった。

 アフリカの大半の地域では、下痢による脱水が子どもの死亡率の最大の原因となっている。このイニシアティブでは、コーラのボトルの隙間にぴったり収まるよう特別にデザインされたAidPodsというパッケージがつくられた。まさにWin-Winの関係である。

 なぜこの話がコラボ戦略の好例なのかというと、両者が力を合わせることで、単独では決してできなかったことを成し遂げられたからだ。同時に、双方がメリットを得た。このイニシアティブによって、ColaLifeは、医薬品の輸送手段を得たし、コカ・コーラにとっては、ブランドイメージの向上につながった。

コラボレーションの提案は
邪魔をする相手にも有効

 ある建設業者が学校の遊び場の舗装を補修することになった。児童が授業を受けているあいだに、業者は作業場所に立ち入り禁止のテープを張って作業に取りかかった。しかし、休み時間になると、子どもたちが外に走り出てきて、作業の邪魔をした。テープなど気にも留めず、踏み越えて群がってきた。彼が追い払おうとしても、意にも介さない。休み時間中作業を中断して時間を無駄にするわけにもいかない。