インド人全員が
数学が得意な訳ではない
ただし、彼は「インド人全員が数学を得意としている訳ではない」とも指摘する。経済的な理由で学校に通えない子どもや9の段のかけ算の計算が怪しい人もいるというのだ。
確かに、数学を含めた国際的な学力比較に使われているPISA調査(2009年)で、インドの2州が試験参加したところ、参加した約70カ国・地域中、下位に沈んだことがある。
私自身も、インドが抱える学力格差を何度も実感した。インド西部ムンバイにあるスラム街を訪れ、いくつかの家庭でインタビューをしていると、小学校までしか通えず、かけ算や読み書きが満足にできない親世代に何人も出会った。高校生年代の中退率は2割近くに上ると言われる。
こうした状況を改善しようと、地元の支援団体「ダラビ・ダイアリー」は地元の子どもたち向けの教室を運営する。足し算や九九、英語以外にも、ワードやエクセル、簡単なプログラミングのやり方まで指導しているが、習熟度は様々だった。
創設者のナウニート・ランジャンさん(46)は「今の時代、数学や英語、デジタルのスキルは子どもたちにより大きな力を与えるはずだ」と言う。逆に言えば、こうしたスキルがなければ、収入が安定した仕事に就きづらく、格差が固定化してしまうということだ。
ちなみに、インド人と言えば英語が堪能という印象もあるかもしれないが、英語で授業が行われる学校は多数派ではない。
地元紙『タイムズ・オブ・インディア』は「小学校から高校レベルにおいて、英語で授業が行われる学校で学ぶ子どもは全体の26%」と報道。その多くが首都ニューデリーなどの都市部の学校だといい、他はヒンディー語やテルグ語といった現地の言語で教えられているのだ。
インド現地の数学教育は
日本のレベルと大差なし
各種の調査によれば、インドで英語を流暢に話せる人は約10%。単純計算だと、14億人のうちの1億4000万人になる。「一定程度話せる」を含めれば割合は増えるが、全体としてはそこまで高くないのだ。私自身の経験でも、政府の幹部や大学教授らへの取材では英語で問題ないが、街中の市場や商店、ガソリンスタンドでは英語を話せる人の方が少数派になった。







