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「インド人は数学が得意」というイメージがあるが、それは本当だろうか。経済格差により十分な教育を受けられない子どもも多いなか、「数学は人生を変える手段」として重視される背景には、この国特有の社会事情があるのだという。新聞記者が、インド各地でその実態を探った。※本稿は、朝日新聞記者の石原 孝・伊藤弘毅『インドの野心 人口・経済・外交――急成長する「大国」の実像』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
“インド式”の暗算方法で
2桁のかけ算を即答!
個人的な話で恐縮だが、私は幼いころから算数(数学)が苦手だった。小学校では居残り授業を何度も受けさせられ、高校の試験でも赤点を取った。
一方で、駐在しているインドの人々は、数学が得意な人が多いというイメージを持たれている。10桁ものかけ算を暗算できるとか、古くは数字のゼロの概念を発見した「数学大国」とも。本当にそうなのか?どうやったら数学を得意になれるのか?解答を求め、各地で聞いて回った。
試しに、ネット上で見つけた2桁のかけ算「18×19」を支局の男性スタッフ(60)に暗算できるか聞いてみた。すると、ぶつぶつつぶやきながら、すぐに342と答えた。どうやって計算したのか。
「暗算しやすいように、まずは19を20に変えます。18×20は360になるので、そこから18を引くと答えになるんです」
よく聞くと、彼が通った私立小学校では、20の段のかけ算まで覚えさせられたという。日本の書店では、独自のテクニックを使った計算方法を記した「インド式計算」に関する本が何冊も売られている。







