同社の海外事業経験は多くない。しかも、投資額は社内でも突出した規模だ。それでも「この好機は二度と得がたい」との意見が勝った。川原さんは言う。「ムンバイには伸びしろがある」
近年、日系企業が相次いでインドでの不動産ビジネスを拡大している。丸紅は20年以降、ムンバイなどで住宅の開発や分譲事業を手がける。三井不動産は20年から、南部ベンガルール(旧バンガロール)でオフィスビル開発事業を進めている。
日本企業のインド進出が
鈍化している要因
一方で、不動産のように投資が盛んな分野はあるものの、日本企業のインド進出は鈍化している。在インド日系企業数は、18年に1400社を超えてからは伸び悩む。
同書より転載 拡大画像表示
ジェトロは、インドの乗用車販売台数で4割超を占めるスズキをはじめ、自動車関連産業が成熟の域に達しつつあるうえ、中小企業の進出が、日系企業全体の15%程度にとどまることを理由に挙げる。インド側からは「日本(企業)が慎重過ぎる」(ジャイシャンカル外相)との声も聞こえるが、24年度にジェトロがインドにおけるリスクを企業に聞くと、「税制・税務手続きの煩雑さ」「行政手続きの煩雑さ(許認可など)」「人件費の高騰」が上位を占めた。
インド経済や日系企業の進出を研究する神戸大学の佐藤隆広教授は、「インドは市場規模として、計り知れない潜在力を持っている」としたうえで、企業側にも忍耐を求める。
「インドでは、地場企業や他の国の企業との競争は激しい。価格競争に巻き込まれたり、労務問題や組合運動に足をすくわれたりする可能性もある。インドが注目されているから進出してみようという考えでは、太刀打ちできないだろう。10~15年の長期的な視点を持つことが大事だ」と指摘する。
『インドの野心 人口・経済・外交――急成長する「大国」の実像』(石原 孝・伊藤弘毅、朝日新聞出版)







