つまり、ミラーは軽いビールであることにこだわるべきだし、セブンアップはコカ・コーラではないことを強調し、エイビスは「私たちはレンタカー業界2位だから、より努力しています」とだけ言いつづけるべきだということになる。
ブランドメッセージは
多ければ多いほどよい
トラウトとライズは、「頭のなかの穴を埋める」ことについて書いている。だが、ひとつの穴を埋めても意味はない。むしろコネクトーム(編集部注/神経回路の地図)を拡大するためには、人々の心にすでに存在するほかの記憶に向けて、大きな道路を何本も、「道路網」となるレベルでつくる必要がある。
ふたりが述べていることに反し、1カ所に重点を置くことにメリットはない。実際には、伝える内容をブランドのひとつの面だけに絞り込むと、ブランドとそのコネクトームを縮小させてしまう。
たったひとつのメッセージだけのコネクトームでは、神経回路はわずかだ。大きく広がる根と広大な樹冠をもつガジュマルの巨木ティママ・マリマヌとは違い、小枝でしかない。そんな状態のコネクトームは、心のなかでほんの小さなスペースしか占めていない。
思い出してほしい。ボードゲームの「モノポリー」のように、最も効果の高いコネクトームが、一番たくさんの「土地」を取って物理的に最も大きな存在感を得ている。
メッセージやプラスの連想がたったひとつしかないブランドをもっているのは、家を1軒だけもっているような状態で、複数のメッセージがあれば町じゅうに不動産を所有しているようなものだ。
消費者は直感的に最も大きくて肯定的なコネクトームがあり多くのテーマをもつブランドを選ぶだろう。実際に、多ければ多いほどよいのである。
「安全」を中心に据えながら
付加価値を次々に足したボルボ
ボルボは、アメリカで長いあいだ安全な車として知られていた。理由のひとつが、箱型ステーションワゴンのデザインだ。
車の安全装置でも先駆者であり、後ろ向きチャイルドシートやボルボのエンジニア、ニルス・ボーリンが1959年につくった3点式シートベルトなどがある。







