エッセイの最後を締めくくっていたのは、ニコラスと祖母とのビデオ通話についての話だった。
そこで、旅によって生まれ変わったニコラスが、自分が将来進むべき道について思いを新たにしたことがつづられる。
1つのすごい実績よりも
複数の魅力が相手に好印象を与える
なぜニコラスは合格したのか?ニコラスのエッセイは、スティーヴンのものとはまったく異なるレベルで、すなわち直感レベルで機能していた。ニコラスは、語ることではなく、見せることに注力した。
『「直感買い」のつくり方 記憶と連想の力で「つい選んでしまう」を促す』(翔泳社、レスリー・ゼイン著、木内さと子訳)
過去に成し遂げたことを宣伝するのではなく、将来のことに焦点を当てた。自分の情熱について説明するのではなく、ストーリーを通じてその情熱を証明してみせた。ニコラスのエッセイは、大学の学生選抜担当者たちの心のいくつもの面とつながった。
結局のところ、選抜担当者も、ほかのみんなと同じように判断をするのである。学生選抜委員会が毎週の会議で応募者ひとりひとりについて検討していくなかで、ニコラスは彼らが知り合いになりたいと思うような、呼吸する生身の人間として現れた。
スティーヴンのほうは一面的なデータの羅列で、エッセイからは生き生きとしたものが感じられなかった。一般的な認識とは逆だが、一定の水準を満たしてさえいれば、合否判定が数字に左右されることはほぼない。
結果を決めるのは、たくさんの層が積み重ねられた、多面的なパーソナルブランドのコネクトームなのだ。







