さらに、ボルボには1970年代初めから専任の事故調査チームがあり、同社の車がかかわる事故を分析し、何が起きたのかを調査し、データを集めて、将来の車の安全性を向上させることに役立てている。
ボルボのステーションワゴンは、その安全性と大きさから、かつては郊外に住む家族にとって憧れの的だった。だが、それだけでは消費者の好みの変化についていくには十分ではなかった。
とくに大きな変化が、ハッチバックとSUVの人気である。これらは、いうなればいまの時代の家族向けステーションワゴンである。
そのため、ボルボは「箱型」については時代に合わせて手放したものの、「安全」というプラスの連想は維持し、「先進技術」「快適性」「イノベーション」「手ごろな価格」「高級性」といったほかのプラスの連想も引き寄せた。
実際に、2021年にはニューヨーク・タイムズに、ボルボはいまや「しゃれた新しい見た目」で車購入者をひきつけている、と書かれたりもした。1990年代のボルボ900シリーズのことを誰もそのように評したりはしなかっただろう。
ボルボは、成長のためには安全性以上のものが必要だと気づいたのだ。
安全性というメッセージをポジショニングの中心に置きつづけることは、もともとのブランド・アイデンティティーを維持するために必要だったが、新しい層を加えることで、潜在的な車購入者の心のなかでブランドのレレバンス(編集部注/顧客の愛着度)を高めたのだ。
複数のメッセージが
顧客の脳を強く刺激する
脳は、刺激を強く求める。複数のプラスの連想がやってくると、脳はその連想がつくろうとするストーリーに飲み込まれる。複数の連想にかかわることで、脳は退屈して興味を示さない状態ではなく、油断せずしっかりと注意を向ける状態になる。
メッセージがひとつだけだと、「脳の利用度が低い」とでもいうべき状態になる。「パーパス」や「健康」といったひとつのメッセージに集中すれば、受け手の脳の1カ所としかつながれない。







